産業廃棄物の管理
産業廃棄物のマニフェスト制度について
産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、決められた事項を記載し交付するもので、産業廃棄物の流れを自ら把握・管理するとともに、委託契約の内容に基づいて適正に処理されていることを確認するための仕組みで、紙と電子の2つの仕組みがあります。(財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)
マニフェストの不交付、虚偽記載、記載義務違反および保存義務違反など、マニフェストに関する義務を果たさない者は、万一、委託した廃棄物が不適正に処理された場合、都道府県等から「措置命令」(法第19条の4第1項)を受けることがあります。また、違反の内容によっては刑事罰を受けることもあります。
「措置命令」に従わない場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの併科となります。
「措置命令」とは、委託した廃棄物が不適正に処理された場合、市町村長や都道府県知事が期限を決めて、その処分を行った者などに対し、支障の除去や被害の発生防止措置を取るよう命じることです。
不適正な処理に直接関わった者が死亡、不明などで措置命令が実行出来ない場合には、委託した排出事業者が措置命令を受けることになってしまいます。
処理費を払った上に高額な撤去費用を払う羽目になるような事は絶対に避けましょう。
そのためには、不断に産業廃棄物処理委託契約書とマニフェストの管理を徹底することをお勧めします。
又、政府の普及努力により、電子マニフェストも使いやすくなってきました。
電子マニフェストの導入のお手伝いをいたします。
産業廃棄物処理・委託基準の遵守とマニフェストの交付
産業廃棄物の処理を他の事業者に依頼する場合には、基準があります。
それを廃棄物処理法上では「委託基準」と言います。(施行令第6条の2)
その1:委託出来る業者に依頼する
許可を持っているだけではダメ!
何をどう処理する許可を持っているかを把握しなければいけません。
例えば、ある産廃業者が建設現場から産業廃棄物を収集運搬した。
実際に運んでみると中に油の缶が多量にあったが、その産廃業者は廃油を収集運搬する許可が無かった。
たったこれだけと思うかもしれませんが、委託基準違反は大問題です。ご注意ください。
その2:契約書の作成が必要
単に運搬を依頼するような契約書ではダメ!
産業廃棄物の委託契約書には、必ず記載しなければならない項目があります。
抜粋するとこのような項目が挙げられます。
- 委託する産業廃棄物の種類と数量
- 収集運搬の場合は、最終の目的地
- 中間処理の場合は、処理場の場所、処理方法と処理能力
- 有効期間
- 受託業者へ払う料金
- 委託する廃棄物の性状や荷姿などの情報提供に関すること
委託契約書では、必須項目を網羅する中で、誰が誰に何をどう処理を委託するのかを明らかにする必要があるのです。
その3:マニフェストの交付
運搬時に携行しなければダメ!
マニフェストは、収集運搬時に携行しなければなりません。
つまり産業廃棄物の引渡しから最終処分終了まで、産業廃棄物と共にするのです。
その為に、マニフェストは通常7枚複写伝票となっています。
A,B1,B2,C1,C2,D,E票です。
- @引渡しと同時に交付、排出事業者はA票を保管
- A収集運搬業者はB1票及びC2票を保管
- B中間処理業者はC1票を保管
- C排出事業者は都合A、B2、D、E票の保管義務があります
- 廃棄物の運搬の把握の為にB2票を保管
- 廃棄物の中間処理の把握の為にD票を保管
- 廃棄物の最終処分の把握の為にE票を保管
その4:委託契約書とマニフェストの保存
最低でも5年間保存しなければダメ!
委託契約書とマニフェストは法定で5年間保存しなければなりません。
ただし、それ以上の期間の契約書の提示を行政から求められる事も考えられますし、契約書は税務や会計の証憑書類でもあるので、長期の保存が必要となります。
産業廃棄物処理委託契約書
産業廃棄物の委託基準には委託契約書に関する規定があります。
これは一般廃棄物には無い規定です。
つまり、一般廃棄物の処分には委託契約書は必須条件ではないということです。
もちろん取引はすべて契約によりますので、一般廃棄物の処分も契約による行為であることに間違いはありません。
ただ書面は必須ではないということです。
さて、委託契約書ですが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)の中で以下の通り規定されています。
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
- イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
- ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
- ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
- ニ 産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第十五条の四の五第一項 の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨
- ホ 産業廃棄物の処分(最終処分(法第十二条第五項 に規定する最終処分をいう。以下同じ。)を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
- ヘ その他環境省令で定める事項
五 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間保存すること。
比較的わかり易い文面で、何が必要か端的に記されています。
書式は、全国産業廃棄物連合会から「産業廃棄物処理委託契約書」の雛形が出ています。
最新版を入手すれば全て網羅されていますので、産業廃棄物に関わる場合は真っ先に入手したい書式です。
契約書式は「収集運搬用」と「処分用」があります。
二者契約が基本ですので、通常は1取引で収集運搬用と処分用の2種類の契約書が必要となります。
当事務所では、産業廃棄物処理委託契約書の作成を承ります。
電子マニフェストを使いましょう!
建設業では、一般的になってきました。
医療業でも、各県の医師会の努力で使用率があがってきています。
静岡県では、県の医師会が、過去の不法投棄事件の教訓から電子マニフェストの使用推進をしてきました。
導入数年にして全県ですでに70%に迫る(平成24年5月現在)使用率となっているとの事です。加入率ではなく、実際に使用しているというこのデータは、任意加入の条件では驚異的な数字です。
電子マニフェストを使いましょう。
JWNET(電子マニフェスト運営を運営する情報センター)直の扱いでは、操作性や機能の面で扱いづらい場合には、間にソフト会社をはさんで、EDIによる取扱いも可能です。
電子マニフェストの場合、排出事業者と収集運搬業者、処分業者が電子マニフェストに加入していないとうまく稼働しません。
ですからまず、排出事業者様に加入していただきたいのです。
もちろん費用はかかりますが、メリットもあります。
日常の産業廃棄物の管理票(紙マニフェスト)の管理が不要となり、多量排出事業者は、事務処理が大幅に軽減されます。
さらに年間の紙マニフェストの集計作業や行政への報告が不要となります。
そして、パソコンによって、排出された廃棄物の処理状況がひと目で分かるようになっています。
収集運搬業者は携帯電話でも運搬登録が出来るようになりました。それを事務所のパソコンで確認することもできます。
この電子マニフェストによって、排出事業者も収集運搬業者も処分業者も廃棄物の処理を登録して即、廃棄物の適正処理をしている事になるのです。このシステムを利用している限り、まず不法投棄の心配はありません。
したがって、リスクマネージメントを推進する企業は、是非導入したいシステムです。
当事務所では、電子マニフェストの導入支援を行っています。