労働者災害補償保険(労災保険)は、その名の通り、労働者の業務中や通勤途上の災害等より負傷し、または病気になったとき保険給付を行うものであり、事業主や法人の役員等、労働者でない者は保険給付の対象になりません。
ただし、労働者以外であっても業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められたときには、一定の手続きを経ることで、労災保険に任意で加入し、保険給付を受けることができます。この仕組みを労災保険の特別加入といいます。今回、昨今の働き方の多様化を受け、この特別加入ができる範囲が広がりました。
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[1]拡大された特別加入の対象
もともと特別加入できる範囲は、以下のようになっています。
- 中小事業主およびその事業に従事する労働者以外の人(役員等)
- 労働者を使用しないで次の事業を行う一人親方その他の自営業者およびその方が行う事業に従事する労働者以外の人(家族従事者等)
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
働き方の多様化によって、労働者に準じて保護する対象の範囲の見直しが行われ、2021年4月より、芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づき事業を行う人について対象となりました。そして、2021年9月より、自転車を使用して貨物運送事業を行う人、ITフリーランスについても対象となりました。
[2]個人事業主等に業務依頼をしている場合の注意点
労災保険は労働者を一人でも雇用した際に、事業場としての成立手続きを行う必要があります。ここで注意すべき点として、形式的には請負契約等により従事する個人事業主等でも実態として労働者であるときには、当然、労働者として扱われ、労災保険の成立手続きが必要になります。これは、契約に関わらず実態で判断されることになっており、労災保険の成立手続を行わなかった場合は、追徴金や給付された費用の徴収が行われる可能性があります。
個人事業主等に業務依頼をしている場合は、実際の業務の状況を確認し、問題があれば労災保険の成立手続きを行うなど、対応を行いましょう。
参考リンク:
厚生労働省「令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります」
厚生労働省「令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります」
厚生労働省「形式的には請負契約等により従事する個人事業主等でも実態として労働者である方を、事業主が使用した場合は、労災保険の成立手続を行う必要があります」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
文書作成日:2021/09/21