工事開始時に労基署に届け出る書類について解説します。
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建設業の特定元方事業者の事業開始報告
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは監督署に対し事業開始に関する報告をする必要があります。なお、作業に従事している労働者数が常時10人未満である場合には報告を省略することができます。
根拠となる通達(昭42.4.4 基収第1231号)
問:元方事業主のすべてが規則第42条[現行=第664条]に規定する報告を提出することは、
事実上困難な場合が多いので、一の場所に働く労働者が少ない場合は、本報告を省略して差し支えないか。
答:一の場所に働く労働者の数が常時、10人未満である場合においては、規則第42条
[現行=第664条]の規定による報告を省略しても差しつかえない。
特定元方事業者の定義
特定元方事業者とは、請負契約の最も先次にあたる事業者のうち、建設業および造船業に属するものをいいます。
労働安全衛生法 第15条第1項(統括安全衛生責任者)
事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、・・・(略)
特定元方事業者の当否
建設業において、請負契約の最も先次にあたる事業者が施工管理業務のみを行っている場合でも、当該事業者は仕事の一部を自ら行うものとして特定元方事業者に該当します。
参考となる通達(昭47.9.18 基発第602号)
発注者等が、工事の施工管理を行なう場合にも当該発注者等は、「特定事業を行なうもの」に含まれるものであること。ただし、工事の設計監理のみを行なっているにすぎない場合には、当該発注者等は、「特定事業を行なうもの」に含まれないものであること。
参考となる通達(昭47.11.15 基発第725号)
施工管理とは、工事の実施を管理することで、工程管理、作業管理、労務管理等の管理を総合的に行なう業務をいい、通常総合工事業者が行なっている業務がこれに該当するものであること。設計監理とは、設計図、仕様書等の設計図書を作成し、工事が設計図書どおりに行なわれているかどうかを確認する業務をいい、通常設計事務所が行なっている業務がこれに該当するものであること。
参考となる判例(平17.12.21 労働安全衛生法違反事件 最高裁第三小法廷)
(要旨)「特定元方事業者」とは、建設業者または造船業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせるとともに、自らも仕事の一部を行う者のうち、最先次のものをいう。自ら行う仕事の一部には、施工管理のみを行う場合も含まれると解してよいが、当該事業の仕事の全部を請け負わせている者はこれに当たらないと解すべきである。このことは、仕事の元請業者であっても同様であり、元請業者のうち仕事の一部を下請人に請け負わせ、一部は自ら行う者だけが「特定元方事業者」となるのであり、仕事の全部を下請人に請け負わせている者はこれに当たらないのである。
報告書の内容
常時就労(使用)労働者数
協力会社の労働者も含めます。その際、役員や一人親方は除きます。常時就労労働者の考え方については、次の2点とも該当する労働者をカウントすれば良いものと思われます。
- 作業開始の時点において、参加することが判明している労働者
- 期間中ほぼ毎日、作業現場に顔を出すことになる労働者
統括安全衛生責任者
一の場所において行う作業に従事している労働者数が常時50人以上(但し、隧道等の建設や一定の橋梁の建設および圧気工法による作業を行う場合は30人以上)の場合、元請業者は統括安全衛生責任者を選任する必要があります。
参考となる通達(昭47.9.18 基発第602号)
本条(令第7条)の「常時50人」とは、建築工事においては、初期の準備工事、終期の手直し工事等の工事を除く期間、平均一日当たり50人であることをいうこと。
「一の場所」の範囲については、請負契約関係にある数個の事業によって仕事が相関連して混在的に行われる各作業現場ごとに「一の場所」として取り扱われるのが原則であり、具体的には、労働者の作業の混在性等を考慮して、この法律の趣旨に即し、目的論的見地から定められるものであること。なお、これを一般的に例示すれば、次のように考えられること。
(建築工事関係)
- ビル建設工事、鉄塔建設工事、変電所又は火力発電所建設工事
→当該工事の作業場全域 - 送配電線電気工事
→当該工事の工区ごと
(土木工事関係)※橋梁建設工事および水力発電所建設工事は省略
地下鉄道建設工事、道路建設工事、隧道建設工事 → 当該工事の工区ごと
参考となる通達(昭47.9.18 発基第91号)
この法律(労働安全衛生法)においては、特定元方事業者等の義務として、新たに下請事業が行なう安全衛生教育についての指導援助が加えられるとともに、従来、労働者の総計が五〇人以上である場合に設けるべきものとされていた協議組織が、当該労働者の総計がそれ以下である場合にも設置すべきものとされたものであること。
なお、この法律に基づいて特定元方事業者等が講ずべき統括安全衛生管理の業務は、当該場所における労働者の総計が五〇人以上である場合には、統括安全衛生責任者に総括管理させなければならないことはもちろんであること。
職務内容
- 元方安全衛生管理者の指揮
- 元請業者が講ずべき措置の統括管理
- 協議組織の設置および運営
- 作業間の連絡および調整
- 作業場所の巡視
- 下請業者が行う労働者への安全または衛生のための教育に対する指導および援助 など
資格要件
特にありません。
選任要件
労働安全衛生法においては特にありません。しかし、「元方事業者による建設現場安全管理指針」においては、事業場に専属の者であり統括安全衛生管理に関する教育を実施し、この教育を受けた者のうちから選任することと記されています。(建災防で講習会を実施しています)
元方安全衛生管理者
統括安全衛生責任者を選任した場合にこれを補佐する者として選任が必要になります。
職務内容
統括安全衛生責任者の補佐および技術的事項の管理
資格要件
- 大学または高等専門学校における理科系等の正規の課程を修めて卒業した者で、その後3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有する者
- 高等学校または中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後5年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有する者
選任要件
事業場に専属の者
※専属の者とは、直接の雇用契約関係にある者をいい、派遣社員は該当しません。
店社安全衛生管理者
一の場所において行う作業のうち主要構造部が鉄骨造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物の建設作業に従事している労働者数が常時20人以上50人未満(但し、隧道等の建設や一定の橋梁の建設および圧気工法による作業を行う場合は20人以上30人未満)の場合、元請業者は店社安全衛生管理者を選任する必要があります。
職務内容
- 少なくとも毎月1回、作業現場を巡視
- 作業の種類その他作業の実施の状況を把握
- 協議組織の会議に随時参加 など
資格要件
- 大学または高等専門学校を卒業した者で、その後3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有する者
- 高等学校または中等教育学校を卒業した者で、その後5年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有する者
選任要件
特にありませんが作業現場の安全衛生を管理する立場上、専属の者以外からの選任は望ましくありません。
関係請負人
作業開始時に判明している協力会社のみの記載で構いません。
提出先
作業現場の所在地を管轄する監督署
提出時期
作業の開始後、遅滞なく
適用事業報告
適用事業報告の概要
労働基準法は原則として本社や営業所、工事現場など場所ごとに適用されます。建設工事を開始する場合でも同法の適用を受ける新たな事業が開始されるものとして監督署に対し報告を行う必要があります。
但し、労働基準法の適用にあたっては次のような考え方が示されております。
参考となる通達 (昭63.9.16 基発第601号の2)
建設現場については、現場事務所があつて、当該現場において労務管理が一体として行われている場合を除き、直近上位の機構に一括して適用すること
工事現場独自で適用事業報告の作成および届出が必要となるのは、例えば現場事務所に事務員が常駐し、そこで直接労働時間の管理を行っているようなケースなどが該当します。
現場事務所において、常駐する事務員もおらず、また、現場作業に従事する労働者の労働時間管理や賃金台帳の調製なども行わない、単に休憩や連絡のために使用する施設については通達が指す現場事務所には該当しません。
このような現場事務所を備えた工事現場の場合、労働基準法においては独立性を持たない事業場とみなされるとともに、直近上位の機構(請負工事の契約を締結した本社や営業所)に一括して同法の適用を受けるため、当該現場独自の適用事業報告を届出る必要はありません。
報告書の内容について
労働者数
役員や一人親方及び派遣労働者は除きます。
提出先
工事現場の所在地を管轄する監督署
提出時期
労働基準法の適用となる事業を開始したとき遅滞なく
工事開始の都度、毎回必ず適用事業報告を監督署に届出なければならないわけではありません(もちろん届出ても結構です)。
また現場事務所を開設し常駐する事務員等に時間外労働や休日労働をさせる場合は別途、時間外・休日労働に関する協定の締結および届出も必要になります。
時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
適用事業報告のケースと同様、現場事務所を開設し当該事務所で専ら事務作業等に従事する労働者が常駐するような場合、当該事務所は労働基準法において独立した事業場となります。
そのため当該事務所に常駐する労働者を1日8時間、1週40時間を超えて使用する場合または法定休日に使用する場合、使用者は当該労働者(常駐者が複数いる場合は常駐者の過半数を代表する者)と協定を締結した上で監督署に対し届出を行う必要があります。
※現場作業に従事する労働者について、現場事務所で労働時間が管理されず、また、賃金台帳も調製されないなど労務管理が一体として行われない場合には、直近上位の機構(請負工事の契約を締結した本社や営業所)に一括して適用されることになります。
※働き方改革において2024年4月からは建設業も一般企業と同様に時間外労働に対する限度時間が設定されることになりました。
届書の内容について
延長することができる時間(2024年3月まで)
建設業の場合、現場作業に従事する労働者および事務作業に従事する労働者についても限度時間はありません。しかし、使用者には労働者に対する安全や健康に配慮する義務があるので過度な延長時間を設定することは望ましくありません。
参考資料 : 時間外労働・休日労働に関する労使協定の実態調査
届出先
作業現場の所在地を管轄する監督署
届出時期
時間外・休日労働を行う前までに
時間外労働の限度時間設定
政府主導で行われてきた「働き方改革実現会議」の中で、建設業においても一般企業と同様に時間外労働に対する限度時間を設定するという実行計画案が示され、法案は可決されました。具体的には以下の通りです。
【原則】
週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ年360時間とし、違反には次に掲げる特例を除いて罰則を課す。
【特例】 大企業:2019年4月より施行、中小企業:2020年4月より施行
特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。
年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける。
この上限については、
- 2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならないとする。
- 単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないとする。
- 加えて、時間外労働の原則は、月45時間、かつ年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の運用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。
【建設業への適用】※大企業、中小企業ともに2024年4月より施行
建設業については、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とはせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用する。(ただし、復旧・復興の場合については、単月で100時間未満、2ヵ月ないし6ヵ月の平均で80時間以内の条件は適用しない)。
併せて将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることとする。5年後の施行に向けて発注者の理解と協力も得ながら、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進する。
【建設業の長時間労働の是正に向けた取組】
適正な工期設定や適切な賃金水準の確保、週休2日の推進等の休日確保など、民間も含めた発注者の理解と協力が不可欠であることから、発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置するとともに、制度的な対応を含め、時間外労働規制の適用に向けた必要な環境整備を進め、あわせて業界等の取組に対し支援措置を実施する。
技術者・技能労働者の確保・育成やその活躍を図るため制度的な対応を含めた取組を行うとともに、施工時期の平準化やICTを全面的に活用したi-Constructionの取組、書類の簡素化、中小建設企業への支援等に生産性の向上を進める。
その他に届け出る書類
機械等設置・移転・変更届
次の機械等を設置、移転、変更するときは監督署に対し届出が必要になります。
型枠支保工
※対象物の支柱の高さが3.5m以上である場合
架設通路
※対象物の高さが10m以上かつ長さが10m以上である場合
但し、組立から解体までの期間が60日未満である場合、届出の必要はありません。
足場
※対象物が、①つり足場または張出し足場、②①以外の足場で高さ10m以上のものである場合
但し、組立から解体までの期間が60日未満である場合、届出の必要はありません。
上記の他にクレーンやデリック、エレベーター、建設用リフトなどを設置した場合にも届出が必要です。
届出義務者
設置、移転、変更する事業者
届出先
設置地を管轄する監督署
届出時期
設置、移転、変更工事開始の30日前までに
建設工事計画届
次の作業を開始するときは監督署(一定の作業については厚生労働大臣)に対し届出が必要です。
- 高さ31m超えの建築物の建設等
- 最大支間50m以上の橋梁の建設等
- 最大支間30m以上50m未満の橋梁の上部構造の建設等
- 隧道等の建設等
- 掘削の高さまたは深さが10m以上の地山掘削
- 圧気工法による作業
- 吹付け石綿等の除去
- 廃棄物焼却設備の解体等
届出義務者
対象となる作業を開始する事業者
届出先
設置地を管轄する監督署(一定の作業については厚生労働大臣)
届出時期
作業開始の14日前までに(一定の作業については30日前までに)
参考リンク:機械等設置届および建設工事計画届 (沖縄労働局のページ)
安衛法第88条の計画届における指導事例集(福岡労働局作成のリーフレット)