社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入
強制適用事業所の要件(建設業の場合)
- 法人の場合→従業員が常時1人でもいれば、強制適用事業所に該当します。
- 個人の場合→常時5人以上の従業員を使用している場合、強制適用事業所に該当します。
※上述の『従業員』には、法人の代表者も含まれます。つまり全ての法人事業所に加入が義務付けられていることになります。
※個人事業所の場合、常時5人(個人事業主は含まない)以上の従業員を使用している場合に強制適用事業所に該当しますが、その際、事業主自身は社会保険には加入できません。
雇用形態ごとの加入要件
一般従業員(期間の定めのない雇用契約下で働くフルタイム労働者)
強制被保険者となります。
パートタイマー等(期間の定めのない雇用契約下で働く短時間労働者)
次の2点ともに該当する場合には、強制被保険者となります。
- 労働日数・・・1ヵ月の所定労働日数が一般従業員のおおむね4分の3以上である場合
- 労働時間・・・1日又は1週の所定労働時間が一般従業員のおおむね4分の3以上である場合
有期契約労働者
- 契約期間が2ヵ月以内の者(日雇者を除く)
強制被保険者とならない。但し、所定の期間を超え、引き続き使用されたときは、強制被保険者となる。 - 契約期間が2ヵ月を超える者
契約期間の当初から強制被保険者となる。
新規適用年月日
日本年金機構では基本的に書類の受付日あるいは提出月の1日を適用年月日として取り扱っています。
但し、諸帳簿等で確認し、事業実態を備えた日を特定できるならば、その日から適用事業所としての要件を満たすことになるため、その日(2年以上遡及する場合は2年遡及する日)を適用年月日とする新規適用を認めることになるとの見解を示しています。
保険料の引落し開始日
例えば、適用年月日または資格取得日が4月21日の場合、保険料は4月分から納付することになり、口座からの引落しは5月末(加入月の翌月末)から始まります。
給与からの控除開始日
一般的には保険料引落日の直近に支払われる給与分から控除します。例えば給与が15日締、当月25日支払の事業所において資格取得日が4月1日の場合、5月25日に支払われる給与から控除を開始します。
給与からの控除額
所得税や雇用保険料とは異なり、基本的に毎月定額となります。なお、保険料を決める等級(正確には標準報酬月額)の定期改定(正確には定時決定)は年に1回(9月)行われ、また、年の途中で給与額に著しい変動があった場合にも改定(正確には月額変更)が行われます。他に、等級の改定以外にも各種保険料率の改定も行われます。
労働保険(労災保険・雇用保険)への加入
強制適用事業所の要件(建設業の場合)
法人・個人を問わず、労働者を1人でも雇用している事業所は、強制適用事業所となります。
労災保険
適用労働者となる者
強制適用事業所に使用される労働者(但し、一人親方や中小事業主等は特別加入制度あり)
途中加入による成立年月日
本来は、労働者を雇用し強制適用事業所に該当した日が成立年月日となりますが、零細企業を中心に依然として未加入事業所が多数存在するなどの背景もあることから、事業主が自主的に加入手続を行った場合であれば、手続きを行った保険年度の初日(4月1日)に遡及しての加入が認められるケースもあります。但し、労災事故を契機に加入する場合には、最大2年前まで遡及しての加入となります。
給与からの控除
労災保険料は、その全てを事業主が負担するものなので、給与からは控除しません。
加入時のポイント
- 事業主が中小事業主特別加入する場合、現場作業に従事する「労働者」を雇用しているか
- 「労働者」の中に事務職員がいない場合、事務所労災への加入は必要か
雇用保険
被保険者となる者(短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は除く)
31日以上の雇用見込みがあり、かつ1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である労働者
途中加入による設置年月日
労災保険同様、労働者を雇用し強制適用事業所に該当した日が成立年月日となりますが、零細企業を中心に依然として未加入事業所が多数存在するなどの背景もあることから、事業主が自主的に加入手続を行い、かつ、全ての労働者からの同意を得ている場合であれば、手続きを行った保険年度の初日(4月1日)に遡及しての加入が認められるケースもあります。
給与からの控除開始日
雇用保険料は、被保険者に給与を支払う都度、控除します。従って初回に支払う給与分から控除を開始することになります。
給与からの控除額
控除する額は、総支給額×0.004(平成31年度料率)で得た値となります。
建設業の特別加入(中小事業主・一人親方)
労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、障害または死亡に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外の方のうち、その業務の実状、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方に対して特別に任意加入を認めているのが、特別加入制度(特別労災)です。
中小事業主等
中小事業主等とは、建設業の場合、常時300人以下の労働者を常時使用する事業主(法人個人を問わない)や事業主の家族従事者、又は事業主以外の役員などをいいます。
中小事業主等が政府労災に特別加入するには、次の2つの要件を満たすことが必要になります。
①雇用する労働者について保険関係が成立していること
元請として工事を請け負い、且つ、常時使用する労働者(現場作業に従事する労働者)がいること
- 原則として下請工事しか行っていない事業所は、現場労災において保険関係が成立できず、また、中小事業主としても特別加入することができません。
- 常時使用する労働者がいなければ特別加入することはできません。但し、継続して労働者を使用していない場合であっても、1年間に100日以上にわたり労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
労働保険事務組合は主に事業協同組合、労働組合、商工会議所や社会保険労務士事務所が母体となって運営しており、特別加入するにはこれらいずれかの事務組合に入会した上で労働保険の事務処理を委託する必要があります。
一人親方
一人親方とは、常態として労働者を使用せずに事業を行う個人事業主や自営業者の方をいいます。なお、一人親方として特別加入するには、一人親方自身がいずれかの事務組合に入会した上で労働保険の事務処理を委託する必要があります。
例:労働保険事務組合 神奈川SR経営労務センター
例として、労働保険事務組合 神奈川SR経営労務センターでは中小事業主等、及び一人親方における政府労災への特別加入が可能です。
同センターに事務処理を委託する際には所属している社会保険労務士と委託契約を締結する必要があります。
委託可能な主たる事業所の所在地 (第一種:中小事業主等) |
委託可能な住居の所在地 (第二種:一人親方) |
|
地域 | 東京都,神奈川県,静岡県,山梨県 | 東京都,神奈川県,静岡県,山梨県、 茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県 |
中小事業主特別加入の費用の例
中小事業主特別加入を提携社会保険労務士が受託する場合、以下の費用が発生致します。
※記載時点の金額であり、今後変わる場合があります。また、秋田税理士事務所との税務顧問契約を締結されている方に限り、提携社会保険労務士への依頼が可能です。
社労士顧問料
4名まで | 15,000円/月 |
5名~9名まで | 20,000円/月 |
10名~19名まで | 25,000円/月 |
※上記の人数には役員も含みます。
法定手続に関する費用
- 労働保険年度更新(毎年5月) 顧問料の2ヵ月分
- 社会保険算定業務(毎年7月) 顧問料の1ヵ月分
- ※年金事務所が数年に1度行う調査立会時 顧問料の2ヵ月分
その他の費用
事務組合加入諸費用 55,000円
- 労災保険成立手続
- 雇用保険成立手続
- 中小事業主特別加入手続
- 事務組合加入手続 など
事務組合費 1,400円/月
委託費用のイメージ(合計人数4名の事業所が4月から委託する場合)
【初年度(4月~翌年3月)】
(15,000円×12ヵ月) +(1,400円×12ヵ月)+ 55,000円 = 251,800円
【次年度(翌年4月~翌翌年3月)】
(15,000円×12ヵ月) +(1,400円×12ヵ月) + 30,000円 = 226,800円
※上記費用には以下の費用等は含まれておりません。
- 現在加入中の労災保険および雇用保険の廃止手続に要する費用
- 年金事務所が数年に1度行う調査立合いに要する費用
- 賞与支払時における手続費用
- 労災保険料および雇用保険料 など
(参考)年間あたりの労災保険料
試算条件:
- 労災保険は既設建築物設備工事業で加入するものと仮定
- 中小事業主特別加入者の日額を最低金額の5,000円で加入するものと仮定
- 年間あたりの元請見込金額を1,000,000円と仮定
- 事務所労災は加入しないものと仮定
【現場労災にかかる保険料】
1,000,000円 × 0.23 × 15/1000 = 3,450円・・・①
※元請ゼロの場合、2年目以降はほとんど保険料は発生しません。
【中小事業主特別加入にかかる保険料】
5.000円 × 365日 × 15/1000 = 27,375円・・・②
※上記は加入者1名あたりの保険料となります。
【労災保険料の合計】
①+②=30,825円
例:神奈川SRに移行するまでの流れ
中小事業主等(第1種)が政府労災に特別加入するためには労働保険事務組合に事務を委託する必要があります。
具体的には、現在加入している労働保険を廃止した後に神奈川SRのもとで新たに労働保険に加入することになります。
神奈川SRに委託可能な主たる事業所の所在地(中小事業主等)・・・東京都、神奈川県、静岡県、山梨県
4月1日から移行する場合
神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結ぶ
まずは神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結びます。
加入中の労働保険を3月31日付で廃止する手続きを行う
- 労働保険確定保険料申告書を所轄の監督署に提出します。
- 還付金がある場合には労働保険還付請求書も提出します。
※神奈川SRへの移行後は新たな労働保険番号が付与されますが、雇用保険適用事業所番号
(〇〇〇〇-△△△△△△-☆)については変わりません。
労働保険の成立等
- 神奈川SRのもとで4月1日付での労働保険(委託型)を成立させる
- 特別加入者の給付基礎日額(5,000円~20,000円)および加入日を決める
- 保険関係成立届や概算保険料、特別加入に関する書類は社会保険労務士が作成します。
- 4月からの保険料は神奈川SRに納付します。
- 神奈川SRのもとで新たな労働保険番号が付与された後、雇用保険各種変更届をハローワークに提出することにより、新たな労働保険番号と雇用保険適用事業所番号とが紐付けされます。
- 雇用保険の被保険者に関する変更手続きは発生しません。
神奈川SRへの移行手続きが完了
労働保険の移行に伴う廃止手続きは自動的に行われるものではなく、また神奈川SRが事業主に代わって行うものでもありません。廃止手続きを行わずに神奈川SRへ移行した場合、移行後も従来までの年度更新関係の書類が事業主宛に送付されてくることになります。
年度の途中で移行する場合(例:9月1日~)
神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結ぶ
まずは、神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結びます。
加入中の労働保険を8月31日付で廃止する手続きを行う
- 労働保険確定保険料申告書を所轄の監督署に提出します。
- 還付金がある場合には労働保険還付請求書も提出します。
- 上述のとおり、雇用保険適用事業所番号については変更ありません。
労働保険の成立等
- 神奈川SRのもとで9月1日付での労働保険(委託型)を成立させる
- 特別加入者の給付基礎日額(5,000円~20,000円)および加入日を決める
- 保険関係成立届や概算保険料、特別加入に関する書類は社会保険労務士が作成します。
- 9月からの保険料は神奈川SR経由に納付します。
- 神奈川SRのもとで新たな労働保険番号が付与された後、雇用保険各種変更届をハローワークに提出することにより、新たな労働保険番号と雇用保険適用事業所番号とが紐付けされます。
- 上述のとおり、雇用保険の被保険者に関する変更手続きは発生しません。
神奈川SRへの移行手続きが完了
※労働保険の移行に伴う廃止手続きは自動的に行われるものではなく、また神奈川SRが事業主に代わって行うものでもありません。廃止手続きを行わずに神奈川SRへ移行した場合、移行後も従来までの年度更新関係の書類が事業主宛に送付されてくることになります。
労働保険に新規加入する場合(政府労災や雇用保険に未加入の状態)
神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結ぶ
まずは、神奈川SRに所属する社会保険労務士と契約を結びます。
労働保険の成立等
- 神奈川SRのもとで労働保険(委託型)を成立させる
- 雇用保険の資格取得手続きを行う(加入資格を満たしている労働者)
- 特別加入者の給付基礎日額(5,000円~20,000円)および加入日を決める
保険関係成立届や概算保険料、特別加入、雇用保険の資格取得に関する書類は社会保険労務士が作成します。
加入手続きの完了
神奈川SRでの労働保険加入手続きが完了
特別加入者の補償対象となる範囲
中小事業主等
業務災害
労災保険における業務災害の補償対象となるケースは、次のとおりです。
- 申請書の「業務の具体的内容」欄に記載された労働者の所定労働時間内に行われる業務およびこれに直接附帯する行為を行う場合
※申請書に記載した所定労働時間内において業務行為を行っていた場合、被災時に労働者が伴っていたかどうかについては問われません。
※事業主の立場において行う事業主本来の業務(例えば事業主団体等の役員、構成員として出席する事業主団体の会議など)に出席する行為については含まれません。(補償の対象外) - 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
※被災時に労働者が伴っていなければなりません。 - 労働者の就業時間に接続して業務の準備または後始末を中小事業主等のみで行う場合
※「準備または後始末」とは、仕事全体が円滑、効率的に行われるために必要な前処理等の通常作業の準備のための作業や所定労働時間内にやり残した仕事の処理などを意味しています。 - 労働者の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合
- 事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場において行われる業務を除く)のために出張する場合
- 通勤途上であって、次に掲げる場合
- 事業主が労働者のために用意した通勤専用のマイクロバス等を利用している場合
※事業主の送迎車による出退勤や事業主所有の自動車等を特別加入者が運転して出退勤する場合はこれに該当しません。 - 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
※これは、特別加入者が台風や火災等に際し、自宅から就業場所へ建物の保全等のために緊急に赴く場合をいいます。
- 事業主が労働者のために用意した通勤専用のマイクロバス等を利用している場合
- 事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合
通勤災害
通勤災害については、一般労働者と同様に取り扱われます。
一人親方
業務災害
労災保険における業務災害の補償対象となるケースは、次のとおりです。
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
※例えば請負契約締結行為や契約前の見積り、下見等の行為を行う場合をいいます。 - 請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を、自家内作業場において行う場合
- 請負工事に係る機械および製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
通勤災害
通勤災害については、一般労働者と同様に取り扱われます。
中小事業主特別加入の注意点
加入に際しての注意点
中小事業主特別加入は、「本来補償の対象外ではあるもののその雇用している労働者と同様の業務を行っている事業主等についても特別に加入を認めましょう」という制度です。そのため労働者を雇用した上で事業所の労災保険を成立させなくては中小事業主自身が政府労災に加入することができません。
監督署では仮に中小事業主特別加入分の保険料を納付していたとしても、被災した際に「常時使用する労働者がいない」ものと判断した場合、すでに事業所の労災保険が消滅し、また特別加入者としての地位も消滅したものとして取り扱います。すなわち効力が消滅している中小事業主労災に加入し続けても結果的に保険が適用されないということになります。
「常時使用する労働者がいない」とは具体的にどのような状況を指すのか?
同居の親族のみで経営している事業所
※親族のみで経営している事業所で、事業主と別居している親族が労働者に当たるかどうかは実態により判断されるため、必ずしも別居の親族 = 労働者にあたるとは限りません。
作業に従事する労働者がいなくなり、今後新たに雇入れる意思がないことが明確な事業所
※1年間で100日以上にわたり労働者を使用している実態があり、被災時にたまたま現場作業に従事する労働者が1人もいない状況であっても、今後労働者を雇入れる意思がある場合には常時使用する労働者がいるものとして取り扱われます。
補足事項
事業主が必ずしも中小事業主特別加入(第1種)へ加入する訳ではありません。法人の代表者であっても常時使用する労働者がいなければ一人親方特別加入(第2種)へ加入することになります。
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