人事労務

建設業の労務管理:残業代の定額払い、残業代の計算方法を解説

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

残業代の定額払い

残業代の定額払い

残業代(時間外、深夜、休日労働における割増賃金)については、原則、各労働者ごとに当該残業時間数を集計した上で支払わなくてはなりませんが、一定の要件を満たすことにより定額での支払いが可能になります。

  • 定額残業代が法所定の額を上回っていること
  • 定額残業代が実時間を集計した額より下回る場合は、不足額を支払うこと
  • 雇用通知書や就業規則、給与明細に「〇〇手当は残業代に対する手当」であることが明確にされていること

導入する際の注意点:

  •  導入後も毎月の時間外、深夜、休日労働における時間数と金額を計算し管理すること
  • 定額残業代の中に何時間分の時間外手当が含まれているのかを明確に示すこと
  • 役職手当や管理職手当をそのまま定額残業代に置き換えて運用しないこと
  • 実質的な賃下げにより不利益変更となる場合、個々の従業員から同意を得ておくこと

残業代の不払いについて

次のような理由により現在は残業代を支払っていないという場合、今後、本人から請求を受けた場合は支払わなくてはなりません。

  • 面接の際、残業代は出ないと説明し、本人もそれに同意した上で入社したのだから問題ない
    →司法の場で争うことになった場合、その主張は一切認められません。
  • 肩書きが管理職なんだから残業代を支払わなくても問題はない
    →残業代が支払不要な管理職とは、簡単に言うと社長の分身と言える次のような方です。

    • 出退勤や労働時間については就業規則等の適用を受けず、自分で自由に決められる
    • 独自の人事決定権(採用や配置、給与決定など)を持っている
    • 会社の機密事項に関与し社長と一体になって会社経営を左右するような仕事に携わっている
    • 給与は他の社員と比べて明らかに高額である中小企業の場合、上記のすべてに該当する方は限りなくゼロに近いものと考えられます。
  •  出来高給を払ってるんだから残業代を支払わなくても問題はない
    →出来高給や歩合給などを支払っているとしても、残業代の支払義務は免れません。
  • そもそも残業自体を命じていないんだから残業代を支払わなくても問題はない
    →始業前の準備時間や終業後の片付け時間などについてはっきりと使用者が残業を命じていないという場合でも実態が黙示の指示(暗黙の了解)により使用者に拘束されており、その指揮命令下で労務を提供していたと認められる場合には、労働時間とみなされます。

関連記事:建設業の労務管理:労働時間、現場までの移動時間や準備時間

残業代の計算方法

自社で雇用している労働者を所定時間外や休日、深夜に労働させたときは割増された賃金(残業代)を支払わなくてはなりません。

該当時間 割増率
時間外 1週40時間または1日8時間を超えた時間 25%以上
休日 毎週1回の法定休日に労働した時間 35%以上
深夜 午後10時から午前5時までの間 25%以上

また、時間外労働が深夜に及んだ場合は50%以上の、休日労働が深夜に及んだ場合は60%以上の割増が必要となります。

賃金支払いが月給制や日給月給制の場合については割増賃金を計算する際、次の手当等を除いたすべての賃金を計算の基礎部分に含める必要があります。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、これらの賃金にあたるかどうかは、名称ではなく、その内容により判断されます。

例えば、家族の有無や人数に関係なく支払われるものはここにいう家族手当には当たりませんし、住宅に要する費用に応じて算定されないものもここでいう住宅手当には当たりませんので、割増賃金の計算の基礎部分に含めなくてはなりません。

《例1》

  • 月給制 月給25万円(家族手当が月額1万円と通勤手当が月額2万円を含んでいる場合)
  • 1ヵ月あたりの平均所定労働時間数 170時間
  • 時間外労働時間数 30時間(うち、深夜が2時間)
  • 休日労働時間数 6時間

計算式

  1. (25万円 - 3万円) ÷ 170時間 × 1.25 × 30時間 = 48,529円
  2. (25万円 - 3万円) ÷ 170時間 × 1.35 × 6時間 = 10,482円
  3. (25万円 - 3万円) ÷ 170時間 × 0.25 × 2時間 = 647円

1+2+3=59,658円 → この月の割増賃金額(残業代)

《例2》

  • 月給制 固定給16万円(家族手当や通勤手当等を除く)+出来高給(請負給)10万円
  • 1ヵ月あたりの平均所定労働時間数 170時間
  • 時間外労働時間数 30時間
  • 深夜労働時間 10時間

計算式

  1. (固定給時間外) 16万円 ÷ 170時間 × 1.25 × 30時間 = 35,294円
  2. (固定給深夜)  16万円 ÷ 170時間 × 0.25 × 10時間 = 2,353円
  3. (出来高給時間外)10万円 ÷ 200時間 × 0.25 × 30時間 = 3,750円
  4. (出来高給深夜) 10万円 ÷ 200時間 × 0.25 × 10時間 = 1,250円

1+2+3+4=42,647円→この月の割増賃金額(残業代)

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税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

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