青色申告の帳簿の付け方|仕訳例・残高確認・保存の実務
最終更新日:2026年9月13日
青色申告の帳簿は、領収書を経費別に集計するだけでは完成しません。個人事業主が55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるには、原則として複式簿記で取引を記録し、貸借対照表と損益計算書等を作成して期限内に申告する必要があります。まず、事業用のお金と生活費を分け、売上・支払い・未入金を同じ取引として追える状態にしましょう。
「会計ソフトを入れたが何を入力するか分からない」「通帳と帳簿の残高が合わない」「仕事が忙しく記帳が止まっている」という方は、今ある資料から状況を整理できます。秋田税理士事務所グループへ経理や申告の依頼を検討している方は、事業内容、入力が終わっている月、現在のお悩みをお聞かせください。資料の集め方と、任せたい作業の範囲を確認します。
帳簿を付け始める前に決める5項目
- 事業用として管理する口座・カード・現金を決める
- 売上と経費の資料を、取引日と相手先で探せるようにする
- 請求した日と入金した日、購入した日と支払った日を区別する
- 自動連携と手入力が重ならない方法を決める
- 月末に残高を照合し、不明点を翌月へ持ち越さない
記帳から申告まで、継続して任せたい方へ
帳簿をすべて完成させてから依頼する必要はありません。資料の保存状況と、どこで作業が止まっているかをお聞かせください。
結論|最初に分けるのは、事業のお金と生活のお金
帳簿を付ける負担は、入力の速さだけで決まりません。事業と生活の支出が混ざっていると、明細を一行ずつ見ながら用途を思い出す作業が増えます。まず、今後の取引を集める口座やカードを決め、事業に使う現金も家計の財布と分けて管理します。
すでに混ざっている場合も、過去の取引が整理できなくなるわけではありません。どの支出が事業用か、どの入金が売上かを資料から確認します。新しい口座を作ることだけを優先し、これまでの明細を捨てたり、途中の月から記録を始めたりしないでください。
「いつから」「どこまで入力済みか」を明確にする
年の途中から記帳を始めるときも、対象年の取引を途切れなく整理する必要があります。前年から事業を続けている方は、前年末の確定した残高を引き継ぎます。開業した方は、事業開始時点の現金、預金、資産、負債などを確認します。とりあえず残高ゼロで始めると、後から帳簿を合わせにくくなります。
入力済みの範囲は、単に「8月まで」ではなく、銀行明細、カード明細、売上請求、現金払いごとに確認してください。銀行だけ8月まで終わり、カードは6月で止まっていることもあります。どの資料の何月分が不足しているかが分かれば、作業の順番を決められます。
この記事は個人事業主の記帳を扱います
ここでは、主に事業所得のある個人事業主の日常の帳簿付けを扱います。不動産所得や農業などでは、決算書の様式や取引に応じた確認が別途必要です。また、副業の収入が事業所得か雑所得かは、帳簿を付けるソフトの選択だけで決まりません。
株式会社・合同会社の法人税申告と、個人の青色申告特別控除も別の制度です。法人としての承認申請や欠損金の管理は、法人の青色申告と経理の進め方で確認してください。
10万円・55万円・65万円控除は、帳簿と提出方法を組み合わせて確認する
65万円は税金そのものが65万円減るという意味ではありません。要件に応じて所得金額から差し引く青色申告特別控除の上限です。実際に使える控除額には所得金額による限度もあるため、全員が同じ税額の軽減を受けられるわけではありません。
| 控除の上限 | 主な確認事項 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 55万円 | 対象となる事業、正規の簿記、貸借対照表・損益計算書等、期限内申告 | 複式簿記の入力だけでは要件を満たし切らない |
| 65万円 | 55万円の要件に加え、期限内のe-Tax送信、または優良な電子帳簿の保存等 | 普通に電子データを保存するだけでよいわけではない |
| 10万円 | 55万円・65万円の要件に該当しない青色申告者。所得の範囲等を確認 | 記帳や書類保存が不要になるわけではない |
e-Taxは申告書だけでなく決算書等も期限内に送る
e-Taxによる65万円控除では、所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を提出期限までに送信することが必要です。申告書を作成しただけ、決算書をパソコンへ保存しただけでは送信したことになりません。対象の書類と受付結果を確認します。
還付を受ける申告でも、55万円・65万円控除を受けるには期限内申告が必要です。「税金が戻るので後から出せばよい」と一律に考えず、帳簿を終える日、決算書を確認する日、送信する日を逆算してください。
優良な電子帳簿と、領収書の電子保存は別です
電子帳簿による65万円控除を選ぶ場合は、仕訳帳と総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たす備付け・保存を行い、原則として所定の届出も期限までに行います。一定の既存適用者について届出が不要な場合がありますが、新しく始める方が自分も不要だと判断しないようにします。
メールの請求書を保存している、領収書を撮影している、会計ソフトからPDFを出せる、といったことだけでは、この要件を満たしたとはいえません。どちらの方法で65万円控除を受けるかを先に決め、利用する年分の条件と実際の運用を照合してください。
簡易な記帳と現金主義も区別する
簡易な帳簿を使うことと、入出金の日だけで所得を計算してよいことは同じではありません。現金主義による所得計算の特例には対象者の要件と届出があり、この特例を選択している方は55万円・65万円控除を受けられません。記帳方法を変える前に、適用している制度を確認します。
必要な帳簿は、同じ取引を違う角度から確認するためのもの
帳簿名を一度に暗記する必要はありません。まず、取引を日付順に並べるもの、科目別に集めるもの、相手先や資産ごとに詳しく管理するものがあると考えてください。会計ソフトでは、入力した仕訳から複数の帳簿を作成できます。
| 帳簿 | 何を見るか | 確認する場面 |
|---|---|---|
| 仕訳帳 | 日付順の取引と借方・貸方 | 入力漏れや同じ取引の重複を探す |
| 総勘定元帳 | 売上・現金・預金など科目別の動き | 月末残高や一年の費用を確認する |
| 現金出納帳 | 事業用現金の入金・出金・残高 | 実際の手元現金と照合する |
| 売掛帳・買掛帳 | 相手先別の未回収・未払 | 請求と決済を対応させる |
| 固定資産台帳 | 設備等の取得・使用開始・償却・処分 | 年末の減価償却や売却を確認する |
領収書の束と帳簿は役割が違う
領収書や請求書は、取引があったことを確認する資料です。帳簿は、その取引をいつ、いくら、どのような内容として計上したかを記録するものです。資料を残すだけでも、数字だけ入力するだけでも不十分で、両方を対応させて管理します。
例えば、会計ソフトの摘要へ相手先と内容を入れ、添付ファイルや資料番号で請求書を探せるようにします。同じ店で事業用と私用の両方を買う場合は、店名だけでは判別できません。購入内容と用途まで記録しておくと、数か月後の確認が楽になります。
試算表から決算書へつながることを確認する
日常の入力を科目別に集計した試算表から、年末の整理を経て損益計算書と貸借対照表を作ります。損益計算書だけを見て利益がそれらしくても、貸借対照表の預金や未払金が間違っていることがあります。
帳簿を付けた後は、売上や経費の合計だけでなく、残っている現金・預金、まだ回収していない代金、これから支払う代金を確認してください。残高が実態と合っているかを確かめることが、記帳を完了させるための重要な手順です。
仕訳の基本|何が増減し、その理由は何かを二つに分ける
複式簿記では、一つの取引を借方と貸方に分けて記録します。借方・貸方という名称は、銀行から借りたか、誰かに貸したかという意味だけではありません。左側と右側に記録する区分として捉え、取引ごとに資産・負債・収益・費用の動きを確認します。
以下は仕組みを説明する仮定の例です。消費税の税区分を省略した税込金額の例として示し、個別の取引の税務判断や特定の会計ソフトの操作画面を示すものではありません。
| 取引 | 借方 | 貸方 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 事業用の文房具3,000円を事業の現金で購入 | 消耗品費3,000円 | 現金3,000円 | 費用が発生し、現金が減った |
| 現金で商品を10,000円販売 | 現金10,000円 | 売上10,000円 | 現金が増え、売上が発生した |
| 事業用預金から現金20,000円を引き出す | 現金20,000円 | 普通預金20,000円 | 資金の置き場所が変わった |
| 事業資金として300,000円を借り入れる | 普通預金300,000円 | 借入金300,000円 | 預金と返済義務が増えた |
出金があっても、すべて経費とは限らない
預金から現金を引き出した時点では、通常は資金の移動です。そこで経費を計上し、現金を使ったときにも経費を計上すると二重になります。また、借入金を返した際の元金部分は、借入金の残高を減らす処理です。利息とは分けて確認します。
「通帳から出たお金は経費」「入ったお金は売上」というルールで処理しないことが大切です。取引の理由が分からないときは、請求書、契約書、返済予定表などを確認し、明細の文字だけで判断しないようにします。
左右が合っていても、内容が正しいとは限らない
会計ソフトでは借方と貸方が一致する形で入力されますが、科目、日付、相手先、事業との関係まで自動で正しくなるとは限りません。同じ支出を二回入力しても、各仕訳の左右は一致します。金額が合うことと、取引の実態を正しく記録したことは別に確認します。
売上は、請求・入金・未回収を一続きで記録する
掛け取引では、売上を計上する時点と入金される時点が異なります。例えば、商品を引き渡して売上を計上し、代金を後で受け取る場合、入金までの間は売掛金として管理します。年をまたぐ取引では、入金日だけを見て売上の年を決めないようにします。
仮定の例|12月の売上が翌年1月に入金される
12月に商品を引き渡し、その時点で50,000円の売上を計上する取引を仮定します。12月は「売掛金50,000円/売上50,000円」、翌年1月に全額入金されたときは「普通預金50,000円/売掛金50,000円」と記録します。
翌年の入金をもう一度売上にすると、同じ取引を二回売上にしてしまいます。請求書番号や取引先名で入金と対応させ、回収後に売掛金が残っていないか確認してください。返品、値引き、一部入金があった場合も、差額の理由を記録します。
売上を計上する日は、取引内容から確認する
請求書を作成した日が、どの取引でも売上日になるわけではありません。商品の引渡し、サービスの提供、検収、契約内容などを確認する必要があります。月末締めの請求書でも、対象となる仕事がいつ完了したかを整理してください。
前もって代金を受け取る場合も、入金時点で仕事が完了していなければ前受金などの確認が必要です。継続契約や工事など判断が難しい取引は、契約書と作業の進捗を示して、計上時期を確認します。
決済手数料が引かれた入金は、差引額だけを売上にしない
売上10,000円に対し、事業者負担の決済手数料300円が差し引かれ、9,700円が入金されたと仮定します。この場合、入金額だけで売上を9,700円にすると、売上と手数料の両方が小さく表示されます。売上総額と、差し引かれた手数料を決済明細で確認します。
ネット販売やキャッシュレス決済では、複数日の売上、返金、手数料が一回の入金にまとまることがあります。通帳だけでは内訳が分からないため、販売管理側と決済会社側の明細を保存し、入金の対象期間まで対応させてください。
経費とカード払い|購入時と引落時を二重に経費にしない
事業用カードで購入し、後日事業用口座から引き落とされる場合は、購入に関する取引と決済を分けて記録します。一般的には購入時に費用や資産と未払金を計上し、引落時に未払金を減らします。実際の科目は購入内容と管理方法に合わせて決めます。
仮定の例|事業用の消耗品6,000円をカードで購入
購入時に費用として計上する消耗品を、事業用カードで6,000円購入した場合を考えます。購入時は「消耗品費6,000円/未払金6,000円」、後日引き落とされたときは「未払金6,000円/普通預金6,000円」です。
購入時と引落時の両方を消耗品費にすると、経費が12,000円になってしまいます。カード明細を取り込んでいる方は、銀行からの引落データをどの取引と対応させる設定か確認します。個人用カードで立て替えた場合は、後述する事業主借などの扱いも確認してください。
公開された体験でも、自動連携の重複が課題になっている
noteで公開されている個人事業主向けの記帳体験には、通販の購入履歴とカード会社の利用履歴を同時に連携し、同じ支払いが二重に登録された例があります。これは投稿者が説明している体験であり、当事務所のお客様の事例ではありません。
対策は、何でも連携することではなく、一つの取引をどのデータから記帳するか決めることです。通販明細は購入内容の資料として使い、カード明細から記帳するなど、役割を整理します。利用ソフトが重複をどう処理するかも確認し、導入直後の一か月分で実際の件数と金額を照合してください。
返金と取消しも元の取引へ戻って確認する
カードで購入した商品を返品した場合、返金が翌月以後になることがあります。購入分だけを削除すると、すでに引き落とされた金額との関係が分からなくなる場合があります。購入、取消し、返金の記録をそろえ、会計ソフトの処理方法に従って訂正します。
明細に同じ金額が二つある場合も、本当の二重入力か、同額の別取引かを確認します。金額だけを条件にまとめて削除せず、日付、相手先、伝票や注文の番号、購入内容を突き合わせましょう。
生活費・立替・家事按分は、事業の経費と分けて管理する
個人事業では、事業主本人と事業とのお金のやり取りが生じます。生活の財布から事業費を払う、事業口座から生活費を引き出す、といった取引を、そのまま売上や経費にしないために使うのが事業主借・事業主貸などの科目です。
個人の財布で事業費を払った場合
事業に必要な文房具2,000円を、生活用の財布から支払ったと仮定します。事業側では「消耗品費2,000円/事業主借2,000円」と記録する方法があります。事業の現金から払っていないのに、現金を減らす仕訳をすると、帳簿残高が実際より少なくなります。
後から事業口座から同額を戻す場合も、もう一度経費にしないよう、最初の立替処理と対応させます。日付と金額だけでなく、立替えた支出の資料番号や精算済みかどうかを残すと、何度も精算する間違いを減らせます。
事業口座から生活費を出した場合
事業用預金から生活費30,000円を引き出した場合は、事業の必要経費にするものではありません。「事業主貸30,000円/普通預金30,000円」などで区別します。事業主本人への給与という科目にしただけで、個人事業の経費になるわけではありません。
銀行口座から所得税や国民年金などが引き落とされる場合も、何の支払いかを確認します。必要経費と所得控除は別の仕組みです。事業の経費として扱えない支出でも、確定申告で別の確認が必要な資料は残しておきます。
自宅兼事務所の費用は、根拠のある割合で分ける
家賃や通信費など、事業と生活の両方で使う費用は、事業に必要な部分を合理的に区分します。面積、使用時間、利用実績など、費用の性質に合った基準を検討します。「誰でも半分」「青色なら全額」といった一律の割合では判断できません。
例えば自宅の一部を事業専用に使う場合は、その場所と面積を確認します。同じ部屋を家族も使うなら、面積だけで十分な根拠になるかも検討します。計算方法と前提をメモに残し、働き方や使う場所が変わったときは割合を見直してください。
月末は、入力件数よりも残高が合うかを確認する
会計ソフトで未処理の明細がゼロになっても、帳簿が正しいとは限りません。誤った科目へ振り分けたもの、そもそも取り込まれていないもの、二重入力したものは残高の確認で見つかることがあります。毎月同じ順番で照合すると、違いを小さいうちに解消できます。
1.現金と預金を実際の残高へ照合する
預金は月末の銀行残高と、現金は実際に数えた事業用現金と照合します。差があれば、まず月初残高が正しいか、対象期間に欠けがないか、同じ明細を二回取り込んでいないかを調べます。口座を複数持つ方は、合計ではなく口座ごとに確認してください。
現金がマイナスになる場合は、私費で立て替えた支出を事業用現金の出金にしている、預金から引き出した現金を記録していない、といった原因も考えられます。原因を調べず、差額を雑費や売上で埋めて合わせないことが大切です。
2.売掛金と未払金を相手先ごとに確認する
売掛金は請求書と入金を照合し、未回収のものを一覧にします。未払金はカード会社や支払先ごとに、まだ決済されていない金額を確認します。残高があること自体が誤りとは限りません。何の取引が残っているか説明できることが重要です。
毎月同じ古い金額が残るときは、入金や支払いを別の科目へ入れた可能性もあります。未回収の代金なら督促などの管理につなげ、帳簿上の処理だけの問題なら対応する仕訳を訂正します。回収できないと思っただけで売掛金を消さないようにします。
3.不明な取引をまとめ、確認を終える
不明な明細は、日付、金額、相手先、確認したい点を一つの一覧にします。「これは何ですか」という質問だけでは確認が往復しやすいため、資料の候補や契約内容があれば添えます。回答を得た後は、帳簿と資料の両方へ反映してください。
毎月、同じ相手先で迷う場合は、摘要や登録ルールを改善します。ただし、自動仕訳のルールを広くしすぎると別の内容まで同じ科目になります。変更後の最初の数件を確認し、前月と違う条件の取引は個別に判断します。
年末の決算整理|12月31日に残っているものを確認する
個人事業の一年の所得を計算するため、通常は1月1日から12月31日までの取引を整理します。年末には日々の入力に加えて、在庫、未入金・未払い、固定資産、家事按分などを確認します。通帳の最終残高だけから利益を計算するものではありません。
在庫と仕掛品を数える準備をしておく
商品や材料がある事業では、年末に残る数量と金額を確認します。買ったものをすべてその年に売ったとは限らないため、期末在庫が利益計算に影響します。保管場所、確認日、数量を数える人、記録用の表を前もって決めておきます。
店舗だけでなく、自宅、倉庫、外部の保管先などに在庫が分かれている場合は、その場所も含めます。傷んだ商品や長く動いていないものがあれば、状況を記録して扱いを確認します。数が分からないまま前年と同額にして済ませないようにしてください。
高額な購入品は、支払額をそのまま経費にしない
パソコン、車両、設備などは、購入金額や使用状況、適用制度によって扱いが変わります。固定資産として計上して減価償却するものか、別の取扱いが使えるかを確認します。カードで支払ったから消耗品費、という判断にはなりません。
資料には購入日、金額、事業で使い始めた日、私用との兼用、売却・廃棄の有無をまとめます。複数の制度が関係する場合も、対象年分の条件を確認してから処理します。節税のためだけに年末へ購入を集中させる前に、支払い後の資金も確認してください。
翌年の入出金も、年末残高の確認に使う
翌年1月の入金を確認すると、年末時点の売掛金が正しく残っていたか分かります。同じように、翌年のカード引落しや請求書から、年末までの費用・未払金の漏れを見つけられることがあります。年が変わった資料をすべて翌年の経費と決めつけないことが大切です。
家事按分や減価償却などを反映した後、貸借対照表と損益計算書を確認します。前年と大きく違う科目には、事業上の理由があるか、入力・集計の誤りかを確かめます。そのうえで、申告書へ転記・連携する数字を確定させます。
帳簿と書類の保存期間|所得税と消費税の条件を分けて確認する
青色申告の帳簿書類は原則7年保存ですが、書類の種類などにより5年のものもあります。さらに消費税の保存義務が関係する場合もあるため、所得税の表だけを見て処分しないようにしてください。
| 個人の青色申告で保存するもの | 所得税の保存期間の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳等 | 7年 | 年ごとに最終版を残す |
| 貸借対照表、損益計算書、棚卸表等 | 7年 | 申告に使った数字と対応させる |
| 領収証、預金通帳、借用証等 | 原則7年 | 前々年分の事業所得・不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年となる取扱い |
| その他の請求書、見積書、契約書、納品書等 | 5年 | 消費税法上7年保存が必要なものなどは別途確認 |
保存の起算日も確認が必要です。受け取った日から何となく数えるのではなく、対象年と書類の区分を整理してください。消費税の仕入税額控除に必要な請求書等や、インボイス発行事業者が交付した適格請求書の写し等には、7年保存の義務が関係します。
電子で受け取った請求書は、データを確保する
メールやウェブサイトで受け取った請求書・領収書などの電子取引情報は、電子データの保存方法を確認します。紙へ印刷しただけで元データを消さず、必要な情報を取り出せる状態にします。検索や改ざん防止等の要件、適用できる措置は実際の条件に合わせて確認してください。
紙の領収書を撮影するスキャナ保存、会計帳簿を電子で保存する制度、電子取引データの保存は別の区分です。撮影したから紙を全部処分できる、会計ソフトを使うから全部対応済み、とまとめて判断しないことが重要です。
保存先は、申告後も開けるかまで確かめる
通販や決済サービスの画面でいつでも見られると思っていても、閲覧期間や契約終了によって取得できなくなることがあります。必要な資料を定期的に保存し、年、相手先、取引内容で探せるようにします。バックアップも、保存しただけでなく実際に開けるかを確認してください。
領収書の整理、電子保存、紛失時の確認については、領収書の管理・保存方法で詳しく整理しています。
会計ソフトは、入力方法よりも運用と引継ぎを先に決める
会計ソフトを選ぶ際は、事業の取引に合うか、銀行やカードの明細を取得できるか、必要な帳簿や申告書を作れるかを確認します。すでに税理士事務所へ依頼する予定がある場合は、使い始める前にデータの受渡し方法を確認すると、後から移し替える負担を減らせます。
自分で入力する範囲と任せる範囲を分ける
売上請求は事業者が管理し、会計入力は事務所へ任せる方法もあれば、日々の入力を自分で行って確認を依頼する方法もあります。どちらでも、同じ取引を双方で入力しない分担が必要です。途中から依頼する場合は、何月何日分から担当を変えるかを明記します。
担当スタッフへ資料を渡す際は、帳簿の専門用語に直すより、取引の事実を伝えてください。何を買い、何に使い、誰が支払ったかが分かれば、確認する内容を整理できます。ソフトの使い方だけの問題なのか、経費や売上の判断で止まっているのかも分けて伝えます。
変更前に、残高とデータの取り出しを確認する
ソフトを変更する場合は、前年末や切替日時点の確定した残高を保存します。総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳、売掛・買掛の明細、添付資料などを、次の環境で必要な範囲まで取り出せるか確認します。移行後は、合計だけでなく科目・相手先別の残高を照合してください。
旧ソフトを先に解約すると、後から必要になったデータを取り出せない場合があります。移行データを開けること、前年の申告内容を確認できること、保存義務を満たせることを確かめてから契約を整理します。認証情報を本文や不特定の共有場所に載せる必要はありません。
記帳が遅れたら、推測で埋めずに不足資料から立て直す
数か月分の入力がたまっている場合は、最初に資料の有無を確認します。銀行・カード・売上・現金・契約などに分け、月ごとの不足を一覧にしてください。すでに入力済みの期間を再入力するより、不足箇所を特定する方が作業を進めやすくなります。
仮定の例|銀行だけ入力済みでカードが半年分たまっている
銀行明細は入力したものの、カード明細を取り込んでいない個人事業主を仮定します。この場合、先に銀行の引落しを経費として処理していないかを確認します。そのままカード明細を追加すると二重になる可能性があるためです。
引落しの処理方法を確認してから、カードの購入明細と資料をそろえます。未払金として残る金額が直近の利用分と一致するかを照合し、確認した月に印を付けます。入力が終わった月と、残高確認まで終えた月を区別すると、進み具合を正確に把握できます。
仮定の例|領収書はあるが用途を思い出せない
同じ店の領収書が複数あり、事業用と私用が混ざっている場合を考えます。領収書の日付、購入品、仕事の予定、メールや注文履歴を照合して用途を確認します。説明できないものを一律に経費にしたり、もっともらしい用途を作ったりしないでください。
確認に時間がかかった支出は、今後購入した時点で用途を記録する運用へ変えます。すべての資料に長い説明を書く必要はありませんが、後から迷う取引に短いメモを付けるだけでも、月次の確認を進めやすくなります。
期限が近いときほど、未処理の範囲を正確に伝える
依頼する際に「ほとんど終わっています」と曖昧に伝えると、必要な作業量を見誤るおそれがあります。未入力の月、資料の不足、残高の不一致、過去の申告の有無を具体的に共有します。期限までに可能な対応と、追加確認が必要なものを分けて判断します。
すでに申告した年の誤りを見つけた場合は、帳簿だけを上書きして済ませず、申告内容への影響を確認してください。税額が増える場合と減る場合では手続きが異なります。修正前の資料を保存し、何をなぜ直すかを記録して進めます。
帳簿付けを任せたい方は、資料の状況とお悩みをお聞かせください
青色申告を続けるために、経営者がすべての仕訳を暗記する必要はありません。事業の取引を漏れなく伝え、資料を保存し、毎月の数字を確認できることが大切です。自分で続けるのが難しい作業は、経理・申告の依頼範囲として整理できます。
- 現在の状況を共有:事業内容、開業時期、使用ソフト、入力済みの月、申告状況を確認します。
- 資料と不足を整理:通帳、カード、請求書、領収書、前年の決算書等を確認します。
- 作業を分担:会計入力、資料提出、取引内容の回答、決算・申告の担当を決めます。
- 毎月の運用を決定:提出日、確認方法、不明点のやり取りをそろえます。
- 申告後も引継ぎ:最終帳簿と受付記録を保存し、翌年も確認できる状態にします。
秋田税理士事務所グループでは、担当スタッフとのやり取りを含め、税務顧問と経理の支援範囲を確認して進めます。資料が整理し切れていない場合も、どの資料があり、何が分からないかをお聞かせください。取引量や現在の状況に応じて必要な作業を整理します。
経理や申告を任せたい方は、現在の経理方法とお悩みをお聞かせください。
記帳の遅れ、資料整理、毎月の確認など、任せたい作業と事業者側で行うことを整理します。