人事労務

建設業の労務管理:偽装請負・偽装出向について解説

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

偽装請負・偽装出向について

偽装請負とは、契約書などの形式上は請負(委託)契約であるものの、上位会社が下請業者の労働者に直接業務指示などを行い、実態としては派遣労働に該当するものをいいます。

  • 労働者派遣法や職業安定法に違反する行為
    →違法な人貸し行為に該当
  • 労働基準法や労働安全衛生法上の使用者責任の所在が曖昧になる行為
    →労働条件の低下を招くとともに、安全衛生管理が疎かになる恐れがある

偽装請負のパターン

代表型

請負と称しながら、注文者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤や勤務時間の管理を行ったりしているパターン

形式だけ責任者型

現場には形式的に責任者を置いているが、その責任者は、注文者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、注文者が指示をしているのと実態が同じというパターン

使用者不明型

業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出す。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をするという一体誰に雇用されているのかがよく分からないパターン

一人請負型

実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋する。ところがBはその労働者と雇用契約を結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示や命令をして働かせるというパターン

出向について

出向とは、出向元事業所との雇用関係とは別に出向先事業所との間において新たな雇用契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態をいいます。

出向については職業安定法で定める『労働者供給事業』に該当する行為ですが、当該出向が業として行われるもの(一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行すること)でない場合は同法違反に当たりません。

一般的に社会通念上業として行われているものと判断されない要件は次のとおりです。

  • 自社での解雇を避けるため、関連会社で雇用機会を確保することを目的とするもの
    →高年齢化対策、雇用調整が目的
  • 直接資本関係のあるグループ企業内での人事交流を目的とするもの
    →提携関係の強化や人材の過不足の是正などが目的
  • 経営指導や技術指導の実施を目的とするもの
    →経理、人事、営業等の援助や技術、ノウハウ等の指導や教育が目的
  • 職業能力開発の一環として行うことを目的とするもの
    →教育研修や能力開発、育成などが目的

出向は通常、営利目的で行われるものではなく、報酬の支払いについても原則、無償か賃金相当額にとどまるため同法違反には当たりません。しかし次のように請負契約関係にある業者間において偽装請負を形式的に回避する目的で行う出向(いわゆる偽装出向)については、社会通念上業として行われているものと判断し得るため、行政による是正指導の対象となります。

  • 上位会社が、下請業者の労働者を指揮監督する(形式的に偽装請負を回避する)目的で下請業者に現場責任者等を出向させる行為
    1. 大手電気機器メーカーが下請業者に対し、指揮命令役となる自社社員約200人を技術指導の名目で出向させていた(出向社員は、出向前と同じように電気機器の製造ラインで直接製造に携わっており、また、出向社員が製造ラインで働くことが現場では必要不可欠な状況であった)。
    2. 大手産業ロボットメーカーが下請業者(同社が100%出資する子会社)に対し指揮命令役となる自社社員約100人を『違法な請負状態の解消』を口実に出向させていた。
  •  下請業者が、形式的に労働者派遣を回避する目的で上位会社に現場労働者や技術者等を出向させ、出向元が当該出向労働の成果を自社の売上に計上する行為
    1. 大手トラックメーカーが人材会社から約1100人の労働者を出向契約という形で自社工場に受け入れ働かせていた。

建設業法第8条(欠格条件)

国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第1号又は第7号から第11号までのいずれか)に該当するときは許可をしてはならない。(一部省略)

第8号 この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの【労働基準法・職業安定法・労働者派遣法】(略)に違反したことにより(略)罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者

※労働基準法は、強制労働等の禁止(第5条)および中間搾取の排除(第6条)が該当

※職業安定法は、労働者供給事業の禁止(第44条)が該当

※労働者派遣法は、建設労働者の派遣の禁止(第4条第1項)が該当

建設業法第29条(許可の取消し)

国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号の一に該当するときは、当該建設業者の許可を取消さなければならない。

第2号 第8条第1号又は第7号から第11号までのいずれかに該当するに至つた場合

事例

  1. 出向契約という形で協力会社の労働者を使用している。現在行っている出向の実態が法にのっとり適切に行われているか確認しようと思い、労働局に直接聞きに行ったが詳しく教えてもらえなかったので相談したい。
    →出向の開始段階および実態面における重要ポイントを説明した後、現在の出向契約書と実態面を確認したところ、適切ではないと判断され得る項目が散見されたため、出向契約書の内容と実態面を見直すようアドバイスしました。
  2. 協力会社と業務委託契約を結び、現場監督のサポート業務をやってもらおうと考えている。その際、当社の名刺を持たせる予定にしているのだがこのやり方で偽装請負と判断されないかどうか相談したい。
    →事前に担当行政書士に相談したものの何の回答も得られなかったため当事務所グループに相談されたとのことでした。委託予定の業務内容を細かく伺い、労働者派遣法、労働安全衛生法、建設業法などの視点から総合的に判断した結果、当事務所グループの考えとしてはNGであると考えます。
  3. 協力会社を選定する際に職務経歴書が送られてくることがある。従事予定者の氏名や年齢など個人を特定しない形で職務経歴書を提出してもらうことは偽装請負に当たるか
    →本件の偽装請負に該当するか否かを検証する際、注文者側が「作業員の配置の決定や変更に関与していない」ことについて、客観的合理的理由があり説明がつくかどうかであると説明し、入手目的が「当該業者の職務遂行能力を確認すること」であれば問題ないこと、また提出時期についても契約前であればOKだが、契約後の場合だと「実際に誰に行わせるかを確認する目的」と解せるためNGと考えます。

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税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

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