長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症するケースが増加しています。先日、この労災請求状況に関する令和2年度の集計結果が厚生労働省より発表されました。以下ではこの内容についてとり上げます。
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[1]脳・心臓疾患の労災補償状況
脳・心臓疾患の労災請求件数は784件となり、前年の936件から152件減少しました。支給決定件数についても194件と、前年の216件から22件減少しています。支給決定件数について業種別にみていくと、「運輸業、郵便業」が全体の3割近くを占め、「卸売業、小売業」、「建設業」と続いています。
[2]精神障害の労災補償状況
精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。令和2年度の請求件数は2,051件となり、前年の2,060件から9件減少しました。一方、支給決定件数については608件となり、前年の509件から99件増加し、過去最高となりました。また認定率については31.9%となっており、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
このうち、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、上位項目は次のとおりとなっています。
- 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(99件)
- 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(83件)
- 同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(71件)
- 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(58件)
- 特別な出来事(54件)
- (重度の)病気やケガをした(50件)
- セクシュアルハラスメントを受けた(44件)
項目の「1.上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」については、2020年5月29日心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、新規に追加されたものです。
[3]パワーハラスメント防止措置の義務化
職場におけるハラスメントの問題は、年々深刻化しており、それが今回のように精神障害の原因にもなり得ます。そのため、企業においてはハラスメント防止に向けた積極的な取組みが求められます。
パワーハラスメント防止措置については、大企業では2020年6月1日より義務づけられていますが、中小企業でも2022年4月1日より義務づけられます(それまでは努力義務)。
企業としては、長時間労働対策を徹底するとともに、業務の内容において過剰な負荷がかかっていないかを確認し、さらにはパワーハラスメント防止に向けて、研修を行ったり相談窓口を周知したりするなどの取組みを進めていく必要があります。
参考リンク:
厚生労働省「令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」
厚生労働省「精神障害の労災補償について」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。