労働時間を適正に把握するよう指導された
指導票事例
労働基準法に労働時間、休日、深夜等についての規定が設けられていることから、使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。(略)
つきましては別途お渡しするリーフレット「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、適正な労働時間の把握方法を検討いただきその結果採用することにした労働時間の把握方法および当該把握方法を実行後〇ヵ月間の労働時間管理の状況について、労働時間記録、賃金台帳等を添えて報告してください。
【労働時間を把握する上での確認事項】
始業、終業時刻の確認および記録
- 単に1日何時間働いたかを把握すればよいのではなく、労務開始時間および労務終了時間の両方を記録した上で1日の労働時間を確認および記録します。
- 作業における準備時間および後片付けに要する時間についても労働時間に含まれることがあります。
【始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法】
使用者が確認および記録する場合
- 労働者と常に行動を共にしている場合は、使用者が自分の目で確認し適正に記録します。
- タイムカード等を利用して客観的な時間の記録を基に、適正に記録します。
やむを得ず自己申告制で行う場合
- 自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に申告を行うよう十分に説明を行います。
- 自己申告による労働時間が正しいかどうかについて、必要に応じて実態調査を実施したりまたは入退場記録やパソコンの使用時間の記録などを基に労働時間の補正を行います。
【賃金台帳の適正な調製】
賃金台帳にはその月の出勤日数だけ記入するのではなく、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数についても記入が必要となります。
時間外労働に関する協定がないことを指摘された
是正勧告書事例
適法な時間外労働に関する協定がないにもかかわらず法定時間外労働を行わせていること
【時間外労働に関する協定とは】
労働者に対してはたとえ本人からの同意を得ていた場合であっても1日8時間および1週40時間を超えて働かせることはできません。ただし、労働者の過半数を代表する者との間で協定を締結し、労基署に届け出ることにより初めて1日8時間1週40時間を超えて働かせることが可能になります。
【労働者の過半数を代表する者の選出手続】
時間外労働に関する協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで投票や挙手、同意書等により選出します。なお、信任を得ないまま使用者側の意向により過半数代表者が選出された場合、その協定は無効となります。
【協定を締結する上での注意事項】
協定締結の際は、労使間で延長可能な時間数を決めて頂くことになりますが、協定時間を超えて働かせた場合には法違反となります。
【延長可能な時間数(2024年3月までの間)】
建設業の場合、現場作業に従事する労働者および事務作業に従事する労働者についても限度時間はありません。しかし、使用者には労働者に対する安全や健康に配慮する義務があるので過度な延長時間を設定することは望ましくありません。
割増賃金の支払いがされていないことを指摘された
是正勧告書事例
法定時間外労働に対し、2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払っていないこと(不足額は〇年〇月〇日に遡って支払うこと)
【ポイント】
- 割増賃金の不払いがある場合には過去に遡っての賃金支払いが求められます。遡及期間については特に記載がないケースもあれば、〇年〇月〇日まで遡って支払うようにといった期間が指定されているケースもあります。
- 不足額の支払い後、是正報告書を提出する際は支払いを証明するための領収書の添付も要求されます。
- 計算の結果、金額が大きくなり支払いが困難な場合には支払い対象となる労働者に対して債権放棄書に署名してもらう方法などもありますが、その場合は放棄してもらう金額をあらかじめ示したうえで同意を得ることが重要です。
- 労基署に是正報告書を提出したらそれで終わりではなく、今後のことを考えてこれまでの賃金設計を見直す(場合によっては固定残業代の導入)などの検討も必要になります。
【法定時間外労働とは】
- 1日単位で見た場合、8時間を超えての労働を指します
- 1週間単位で見た場合、40時間を超えての労働を指します
【割増賃金の支払いが必要となるケース】
《例》月給制で1日の労働時間が8:00~17:00(途中休憩60分) 会社休日が日曜祝日
ケース①
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 合計時間 | |
労働時間 | 休 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40 + 8 |
法定時間外労働 | 休 | 2 | 1 | 3 | 2 | 0 | 2 | 10 |
上記の場合、法定時間外労働は合計で18時間となります。ポイントとしては、土曜日の
1時間目から法定時間外労働による25%以上の割増対象になるという点です。
割増賃金の算出方法 : 時給単価×18時間×1.25=その月の支払額(不足額)
ケース②
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 合計時間 | |
労働時間 | 休 | 8 | 8 | 4 | 6 | 8 | 6 | 40 |
法定時間外労働 | 休 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 |
上記の場合、法定時間外労働は合計で5時間となります。
割増賃金の算出方法 : 時給単価×5時間×1.25=その月の支払額(不足額)
健康診断に関して指摘された
是正勧告書事例
【ケース①】
常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に健康診断を行っていないこと
【ケース②】
深夜業に常時従事する労働者に対し、6ヵ月以内ごとに1回、定期に健康診断を行っていないこと
【ケース③】
健康診断の結果、異常の所見があると診断された者にかかるものについて、医師の意見を聴いていないこと
事例別ポイント
【ケース①のポイント】
常時使用する労働者とは・・・
- フルタイムで働く労働者(外注の一人親方は除く)
- パートタイマーのうち、1週あたりの所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と比べて4分の3以上であり、かつ、1年以上の雇用見込みがあるかあるいは1年以上雇用されている者(特定業務従事者に関しては6ヵ月以上と読み替え)を指します。
【ケース②のポイント】
深夜業に常時従事する労働者とは・・・健康診断を受けた日以前6ヵ月間を平均して1月当たり4回以上深夜業に従事した労働者を指します。
①または②の指導を受けた場合、速やかに健康診断を実施して頂く必要があります。
【ケース③のポイント】
医師の意見とは・・・健康診断を実施した結果、異常の所見があると診断された労働者については、健康診断実施後、3ヵ月以内に医師等から意見を聴くことが必要となります。
意見を聴く医師とは・・・
- 労働者数が50人未満の事業場については、各都道府県内に設置されている地域産業保健センターに電話かFAXで申し込むことにより無料でサービスの提供を受けることができます。
- 労働者数が50人以上の事業場については、選任している産業医から意見を聴くことになります。
【ケース③の医師の意見を受けた結果】
- 意見区分が通常勤務:通常の勤務でよい
これまでどおり通常の勤務をさせて構いません。 - 意見区分が就業制限:勤務に制限を加える必要がある
勤務による負荷軽減のために労働時間の短縮や作業の転換等の措置を講じる必要があります。 - 意見区分が要休業:勤務を休む必要がある
療養のため、休暇や休職等により一定期間勤務させない措置を講じる必要があります。
③の指導を受けた場合、速やかに医師の意見を聴いたうえで意見区分に応じた措置を講じて頂く必要があります。
健康診断の際の費用負担について
通達において、『労働安全衛生法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである』という見解が示されています。
受診のために要した時間は労働時間に該当するか
通達において、『一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議によって定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと』という見解が示されています。
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