税務調査

税務調査で重加算税を課されると脱税扱い、税務署からマークされる

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

税務調査で重加算税を課すかわりに総額の追徴税額を少なく抑えていただけるようです、良かった

良くないです。そのような話を持ち掛けられても受け入れない方が良いでしょう。

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国税調査官の狙いは「重加算税」を課すことにある

「重加算税」とは、事業者が税金を逃れるために帳簿に売上を過少に記載したり、金額を改ざんするなどの不正行為を行った場合に、追徴課税として課されるものです。不正行為による隠蔽や仮装に対しては、増加の本税に対して35%の税率が、無申告加算税がある場合には、増加の本税に対して40%(場合によっては50%)の税率が課せられます。

国税調査官は、「重加算税」を必要以上に狙っています。その理由は、上司からの評価が関わっているためです。国税調査官は、税務調査によって増加した所得が大きい方が評価されます。また、どれだけ「重加算税」を徴収できるかが重視されます。

そのため、国税調査官は常に「重加算税」を徴収する方法を考えています。そのため、「悪意がない単なる計上漏れの売上」でも、「隠ぺい行為なので重加算税の対象ですね」と話を持っていくことがあります。しかし、簡単に「重加算税」を受け入れてしまうことは避け、慎重に対処することが必要です。

重加算税の要件(隠蔽や偽装に該当するケース)

国税庁のホームページには、「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」が掲載されています。この指針に基づき、重加算税が課税されるケースを見てみましょう。

以下は、隠蔽や偽装に該当するケースです。

  • 二重帳簿を作成していた。
  • 帳簿や書類を隠蔽したり、偽った記載をしていた。
  • 税務申告で提出する証明書などを改ざんしたり、偽った申請で証明書等の交付を受けていた。
  • 簿外資産(確定した決算の基礎となった帳簿の資産勘定に計上されていない資産)に関する利息収入や賃貸料収入などを計上していなかった。
  • 簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金、またはその帳簿に費用を過大もしくは架空に計上することにより帳簿から除外した資金)で役員賞与その他の費用を支出していた。
  • 同族会社であるにも関わらず、株主に架空の者や単なる名義人を記載して、非同族会社として申告していた。

重加算税の例:二重帳簿を作成していた

二重帳簿というのは2つ帳簿を作成しているということです。一方は正しい帳簿で、もう一方の帳簿は売上を除外する等し、この脱税を行っている帳簿で申告を行っている状態のことを指します。

これによって、銀行等には利益をきちんと見せることで融資を受け、税務署に納める税金を少なくしようという魂胆があります。

非常に悪質なため、こういった方に対して重加算税が課されます。

重加算税が課されないケース(仮装や隠蔽に該当しないケース)

以下の場合は、正当な理由があるため、重加算税の対象と指摘を受けても通常受け入れる必要はありません。

  • 収入の計上を繰り延べており、その収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認された場合。
  • 経費の繰上計上をしており、その経費が翌事業年度に支出されたことが確認された場合。
  • 棚卸資産が棚ざらし状態等である場合でも、評価替えによって過小評価されている場合。
  • 確定した決算の基礎となった帳簿に、損金算入限度額のある費用(寄附金、交際費など)を他の費用科目に計上している場合。

ただし、当然のことながら、これらの場合においても証書書類等の破棄、隠匿、改ざんなどの不正行為が行われていないことが前提です。

重加算税が課されない例:収入の計上を繰り延べており、その収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認された場合。

例:次のケースでは、売上が計上されるべき時期は2023年です。しかし、売上を計上するタイミングが通帳の入金ベースで行われており、2024年の申告にこの売上が含まれている場合は「売上の除外」までは行っていません。

  • 売上入金:2024年1月10日
  • サービス提供の完了:2023年12月20日

もちろん、2023年にも2024年にも売上が計上されていなければ脱税ですが、2024年の売上として計上されている場合には、これだけでは重加算税を課されるということはありません。

重加算税の指摘を受けたら、まずは根拠を尋ねるべき

よく「重加算税と指摘された場合、どのように反論すればいいのか」という質問を受けますが、まずは「重加算税と指摘された理由を国税調査官に聞くこと」が大切です。

重加算税の課税要件を知っているかどうかに関係なく、まずは国税調査官に「重加算税と指摘された理由は何ですか?」と尋ねましょう。

重加算税の課税要件は国税通則法第68条に基づき、「隠ぺいまたは仮装」行為があったかどうかが重要です。

そのため、もし調査官が「隠ぺい」や「仮装」という言葉を使用しなかった場合、重加算税の課税要件を満たしていないのに指摘してきている可能性があります。

また、隠ぺいや仮装として主張してくる場合であっても、根拠となる条文が不明な場合に反論することはできません。したがって、いま問題になっているのは何なのか、どのような問題があるかを調査官に確認し、その根拠に対して税法上反論できるかどうかを検討する必要があります。

追加納付税額0の重加算税も受け入れない方が良い

国税通則法第119条第4項により、重加算税などの罰金は「5,000円未満」の場合は免除(少額のため徴収不要)とされています。

ただし、この場合でも重加算税がかかったこと自体は税務署に記録されており、「重加算税がかかっていない」わけではなく、くまでも「重加算税がかかった結果、増えた税額が端数計算によって免除されているだけということに注意が必要です。

したがって、増える税額がゼロだったとしても重加算税がかかったという事実が残り、税務調査の頻度が上がるなどのデメリットが生じます。

そのため、もし「重加算税がかかるけど増える税額は変わらないから安心して」と言われたとしても安易に受け入れず、反論できる余地があるなら反論した方が良いでしょう。

トータルの税額が下がってでも重加算税は受け入れない方が良い

国税調査官が悪意がない計上漏れに対して重加算税を主張したり、「重加算税を認めたらこことここは今回は見逃します。トータルの税額が下がるので重加算税を受け入れてください」と言うことが稀にあります。

ただし、トータルの税額が下がったとしても重加算税は基本的に受け入れない方が良いでしょう。なぜなら、重加算税を認めてしまうと脱税を意図的に行ったと認められるため、税務署から脱税を行う事業者としてマークされることになってしまうからです。

廃業するなら良いかもしれませんが、事業を続けるのであれば通常は重加算税を受け入れない方が良いです。

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