税務調査

農業の税務調査は何を確認する?販売・自家消費・補助金・棚卸と準備資料

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

農業の税務調査では、通帳に入った金額だけでなく、販売先ごとの取引、家事用・事業用に使った農産物、交付金や補助金、期末の在庫や資産を分けて説明することが大切です。JAへの出荷以外に、直売、委託販売、ネット販売、作業受託等があれば、その記録も確認します。

農業と会社員の収入がある方、家族で複数の仕事をしている方、途中で法人を作った方は、誰のどの収入かを分ける必要があります。「農業だから申告しなくてよい」「補助金だから全て税金と無関係」という判断はしないでください。

秋田税理士事務所には元国税調査官の税理士が在籍し、調査のみのご依頼にも対応しています。農作業と資料整理を同時に抱え込まず、届いた連絡と、販売・入金等の資料をお知らせください。何を探し、どの説明を事務所で進めるかを整理します。

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最初に、申告者・営農の形・対象期間を確認する

個人の農業所得の申告と、農業法人の決算では、計算・申告の枠組みが異なります。農業の申告書の作り方を、そのまま法人へ当てはめることはできません。法人化した時期、設備・在庫・販売契約の引継ぎも確認します。

税務署から連絡があった場合は、税目、年分・事業年度、担当者、日程、求められた資料を記録します。農地や機械を共有している家族がいる場合も、家族全員の取引を一人の売上や経費にまとめず、契約・支払・実態を整理してください。

最初に伝えること 確認する資料 整理する理由
個人か法人か 申告書、設立や事業移行の資料 申告者と対象期間を分ける
作物・業務 作付け、販売、作業受託等の記録 収入の種類と集計方法を把握する
販売先 JA、卸、直売、ネット等 集計から漏れた入口がないか確認する
家族・共同作業 担当、支払、機械の利用 誰の収入・費用かを説明する
通知・提出状況 税務署の書面、提出済み控え 次の期限と対応範囲を決める

JA等の精算は、販売総額と差引入金を区別する

農産物の代金から手数料、運賃、資材代等が差し引かれ、まとめて振り込まれる場合があります。通帳の入金額だけを売上にしていると、売上と経費の内訳が帳簿に現れないことがあります。

販売・出荷の明細、精算書、控除された費用の明細、通帳を照合します。概算払いや後日の追加精算がある場合には、当初の明細と最終の明細の関係も残してください。同じ販売を二重に売上へ計上していないか、入金のない販売が集計から漏れていないかも確認します。

仮例:販売100万円から費用8万円が引かれ、92万円が入金

説明のため、販売額が100万円で、手数料等8万円を差し引いた92万円が振り込まれたとします。この場合、92万円だけを見ると、取引の総額と控除の内訳が分かりません。まず100万円の対象期間・販売内容と、8万円の費目・取引の根拠を確認します。

8万円の全てが同じ年の経費か、消費税上どのように扱うかも、内訳から確認します。この仮例は差引入金と販売総額を区別するためのもので、各精算書へ一律の税区分を付けるものではありません。

直売・委託販売・ネット販売・現金取引を一覧にする

JA等の資料がそろっていても、それ以外の収入が集計されているかを確認します。直売所の売上、個人への販売、委託先からの精算、ネット販売、作業受託料などを別々に挙げ、受け取り方を並べます。

現金で受け取り、そのまま生活費に使った場合でも、事業の収入であることは変わりません。一方、個人の貯金の移動や借入を、入金があったという理由だけで売上へ含めるものでもありません。取引の相手・内容と記録を照合してください。

委託販売では、出荷した数、販売された数、返品や売れ残り、手数料、入金を区別します。売れ残りを受け取った場合は、廃棄・自家消費・翌期の販売など、その後の扱いが分かる記録も残します。

自家消費・事業消費は、お金が入らないことだけで除外しない

収穫した農産物を家庭で消費したり、贈答や事業上の支払等へ使ったりする場合には、現金の入金がなくても収入として検討する事項があります。販売がないから何も記録しなくてよい、と一律には判断できません。

いつ、何を、どれだけ、どの用途へ使ったかを残します。数量だけでなく金額の評価根拠も必要になるため、後から都合のよい単価を選ばず、適用される取扱いと記録を確認してください。所得税と消費税の判断を同じ一つの計算で済ませないことも大切です。

農産物の動き 残したい記録 確認すること
家庭で消費 種類・数量・時期 家事用に使った分と評価
贈答等 相手、目的、数量 取引・用途と税務上の取扱い
事業上の支払等へ使用 契約・相手・数量 何の対価で、どう処理したか
廃棄・減耗 理由、時期、状態 消費や販売と区別できるか

過去の記録が十分でない場合は、現在の推測を当時の実測のように書かず、残っている出荷・在庫・作業の記録から確認します。当事務所が、説明できる範囲と追加確認する内容を整理します。

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交付金・補助金・保険金は、制度名と支給目的を確認する

通帳の摘要が「補助金」だからといって、全て同じ処理にはなりません。支給決定、交付要綱、対象経費、入金、実績報告や返還の資料を一組にします。収入としての扱いと、設備取得・経費との関係を確認してください。

例えば、機械の取得に関連する補助金と、収入の減少を補う給付では、検討する事項が異なります。所得計算上の特例がある場合にも、対象者、条件、必要な手続き等を確認します。「補助金の入金は全て課税対象外」「機械代から差し引けば申告しなくてよい」とは扱いません。

複数年度にまたがる場合は、決定・請求・入金・対象事業の時期を並べます。申告した年と実際の資料の関係が分かるようにし、返還があった場合も当初の処理とつなげて確認します。

棚卸は、農産物と購入した資材を分けて考える

農産物、加工品、種苗、肥料、農薬、飼料等は、種類や使用・保有の状況によって確認する事項が異なります。個人の農業所得の計算には農業特有の取扱いがあるため、一般の小売業の期首・期末在庫の式を、そのまま全てに当てはめないでください。

期末に何が、どこに、どれだけ残っていたか、どのように評価したかを確認します。購入した袋数と、実際に使用した数量、残った数量が説明できると、取引をたどりやすくなります。複数の家族・事業で資材を共有している場合は、その区分も必要です。

災害、病害、品質の低下、廃棄等があった場合には、日時・内容・数量・写真・関係資料を保存します。在庫が減ったことだけから、販売漏れとも経費とも即断しません。栽培や販売の実態と、採用した処理を照合します。

農機具・修理・燃料・家族への支払を確認する

農機具の購入では、取得と使用開始の資料、購入額の内訳、下取り・補助金・借入の関係を整理します。借入の元本返済と利息、機械代と修理代を分け、通帳の出金だけで科目を決めないようにしてください。

燃料、車両、家屋や電気等を家事と共用している場合には、使用実態と区分の根拠を確認します。毎年同じ割合だから無条件に正しいとは扱わず、営農の形や利用状況が変わっていないかも点検します。

家族へお金を渡したときも、誰がどの仕事をし、どのような制度・条件で経費として処理したかを確認します。単に現金を渡せば全額経費になるわけではありません。届出、勤務や作業、支払の記録をお知らせください。

消費税とインボイスの資料は、所得の資料と別に確認する

個人・法人の所得や利益の計算を終えただけで、消費税の申告の要否まで確認済みにはなりません。課税事業者か、インボイス登録があるか、どの計算方式を使っているかを、届出・登録と期間から確認します。

交付金等、販売、資産の売却、家事消費等は、その性質に応じて消費税上の検討も必要です。所得税の収入に入るものを全て同じ消費税区分にする方法は取りません。消費税の税務調査の確認点もご参考ください。

数量の流れから、売上と在庫を確認するための一覧

農産物について、収穫・仕入、出荷・販売、返品、自家消費、廃棄、期末に残っていた数量を、種類と保管場所ごとに整理します。これは数量を照合するための一覧であり、この数式をそのまま税務上の収入・売上原価の計算へ使うものではありません。

特に、kg、袋、箱、俵等の単位が混在している場合は、換算条件を残します。水分・品質・選別等による数量差があるなら、その事情も記録します。単位が違う資料をそのまま足して売上漏れや在庫不足と判断しないようにしてください。

項目 記録する内容 他の資料との照合
入ってきた数量 収穫・仕入の種類と数量 作業、購入、入庫の記録
外へ出た数量 出荷・販売・返品等 出荷伝票、販売・精算
販売以外の使用 家事用、事業用、贈答等 使用日、用途、数量
廃棄・減耗 理由、状態、数量 写真、報告、作業記録
残った数量 期末の種類・場所・数量 実測、保管や管理の記録

販売先の資料がkg、自分の記録が箱数である場合、単に数字が違うから誤りとは限りません。一方、換算条件が曖昧なら追加確認が必要です。当事務所へは、どの資料を基準に管理していたかもお知らせください。

仮例:精算・直売・家庭で使った分が混在している場合

説明のため、ある期間にJA等への販売明細が100万円、手数料等差引後の入金が92万円、別の直売の現金受領が10万円あったとします。通帳の92万円だけでは、JA等の販売総額も直売の10万円も把握できません。まず二つの販売の内容・期間と、差し引かれた8万円の内訳を確認します。

加えて家庭で使用した農産物があれば、その種類・数量・評価等を別に整理します。入金がないので金額はゼロ、と一律には扱いません。ただし、この仮例の数字に適当な自家消費額を足せば申告が完成するわけではなく、適用される取扱いと実際の記録を確認する必要があります。

さらに、同じ精算額を出荷時と入金時に二回数えていないかを点検します。販売総額、差引費用、直売、自家消費等、口座への入金を分けることで、説明が必要な箇所を見つけられます。所得税と消費税の計算は、この一覧の全項目を同じ区分で扱うものではありません。

農作業の受託・機械の共同利用がある場合

自分の農産物の販売以外に、他の農家の作業を請け負った対価や、機械の利用に関する精算がある場合は、その契約と実態を整理します。農作業の収入と、家族間・共同事業者間の立替や負担金等を、入金だけで区別するのは難しい場合があります。

誰のどの圃場で、どの作業を、いつ行い、何を基準に金額を決めたかを残してください。燃料・修理・人件費等を共同で負担している場合には、実際の負担者と利用の内容も確認します。同じ支出を複数人の経費へ重ねていないかを点検します。

消費税の計算でも、農産物の販売と役務の提供を名称だけで同じ区分にしないようにします。販売品目、提供した内容、採用する計算方式と届出の状況を当事務所へお伝えください。

個人から法人へ移った年は、農産物・資材・機械の引継ぎを整理する

法人化した年に、個人時代の農産物の代金が旧口座へ入ったり、法人が個人の機械を使ったりすることがあります。通帳の名義だけ、入金日だけで、全ての取引がどちらの事業へ帰属するかは決まりません。

移行日、販売契約、在庫・資材、機械の所有と利用、売掛金・未払金の引継ぎを一覧にします。実際に何を売却・貸付け・出資等したかによって、確認すべき手続きや税務も異なります。「会社を作ったので全部会社のものになった」という整理では足りません。

個人の最後の申告と法人の最初の申告で、同じ収入や費用が重なっていないか、逆にどちらにも入っていないものがないかを確認します。過去の資料が途中で途切れている場合も、当事務所が前後のつながりから確認項目を整理します。

農業の税務調査について、よくあるご質問

JA等の資料があれば、帳簿は不要ですか?

販売・精算の資料は重要ですが、直売、作業受託、自家消費、JA等以外への支払や資産等の全てが載っているとは限りません。申告書・帳簿と各資料の関係を確認します。

不作だった年は、売上の減少だけ説明すればよいですか?

作付け・収穫・出荷・品質・販売単価等、実際の事情を資料で整理します。補填や保険金等があれば、その資料も別に確認します。売上減少だけで全ての処理が決まるわけではありません。

家庭で食べた量を正確に記録していません。どうすればよいですか?

記録がないことをそのままお知らせください。残っている収穫・出荷・保管等の記録を確認し、根拠を持って説明できる範囲と不足事項を整理します。推測を当時の実測記録のように書き換えず、今後の記録方法も含めて当事務所がご案内します。

当事務所へ相談するときの資料と進め方

申告書・決算書、販売・出荷・精算の資料、通帳、現金の記録、交付金等の決定通知、農機具の資料、棚卸や自家消費の記録をご用意ください。不足がある場合は、どこまで残っているかをお知らせください。収穫や繁忙期で集められない資料があれば、期限と担当を整理します。

秋田税理士事務所が、申告書の数字と販売・資金・現物の関係を確認し、税務署とのやり取りを進めます。日々の農作業を担う方には実際の取引・利用状況の確認をお願いし、申告計算や説明の構成を一人で抱え込まない分担をご案内します。

初回相談は無料です。税務署の任意調査対応の着手金の掲載額は個人20万円・法人30万円で、過年度申告作成等は別に確認します。サービスの料金と対応内容に基づき、受任範囲と消費税込みの総額を見積りでご説明します。

数年分の申告が止まっている方は、無申告を依頼する際の資料と進め方もご参考ください。今ある資料と届いた連絡から、ご相談いただけます。

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  • この記事を書いた人

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

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