税務調査

税務調査で棚卸・在庫を指摘されたら?数量・単価・廃棄と期末資料の確認

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

税務調査で在庫の金額を確認された場合は、期末に自社が保有していた商品・材料等の数量と、適用する評価方法・単価、帳簿・申告への反映を照合します。倉庫にある物を全て自社在庫とするのでも、売れていない物を自由にゼロ評価するのでもありません。

棚卸表がある場合も、数えた原始記録や入出庫、仕入、委託先の保管などへ戻れることが大切です。秋田税理士事務所では、元国税調査官の税理士が在籍し、期末資料の確認と税務署への説明、今後の棚卸の分担を支援します。

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在庫を少なく記録すると、利益にどう影響するか

一般的な商品の売上原価は、期首商品棚卸高と当期仕入高を合わせ、期末商品棚卸高を差し引いて計算します。そのため、期末在庫を実際より少なく計上すると、売上原価が大きくなり、利益を少なく計算する原因になります。

例えば、期首100万円、仕入500万円、期末150万円なら、この単純な前提での売上原価は450万円です。期末を誤って100万円とすると、売上原価は500万円となり、50万円の差が生じます。この50万円をそのまま税額とするものではありません。

この式は一般的な商品売買の説明です。製造、工事、農業等では、仕掛品・未成工事・原価集計や固有の取扱いを別に確認します。全ての業種へ同じ計算表を当てはめないことが必要です。

棚卸の指摘を受けたら、数量差と評価差を混ぜない

税務署と自社で在庫額が違うとき、まず同じ商品・同じ期末・同じ範囲の金額を比較しているかを確認します。そのうえで、数量の違い、単価・評価方法の違い、対象品目の違いへ分けると、原資料を探す作業を絞れます。

例えば、自社は20個×800円で16,000円、指摘では25個×900円で22,500円となっている場合、差6,500円には数量と単価の二つの要因があります。差額全体を数え漏れと扱わず、五個の差と一個当たり100円の差を別に確かめます。この数字は説明用で、特定商品の適正な税務評価を示すものではありません。

比較する項目 自社の仮例 指摘の仮例 調べるもの
数量 20個 25個 数取表、別倉庫、入出庫
単価 800円 900円 仕入記録、評価方法、費用の範囲
評価額 16,000円 22,500円 数量と単価の前提を確認して再計算

同じ金額になったとしても、別の商品同士の誤りが相殺されている可能性は残ります。合計だけで解決したとせず、指摘された商品と大きな差がある項目について、計算根拠まで確認します。

数え方と在庫データの「単位」を合わせる

実地棚卸では箱単位、販売管理では個数、仕入先の請求では重量というように、使う単位が違うことがあります。箱数に一個当たりの単価を掛けたり、内容量が違う商品を同じ品目にまとめたりすると、数量と金額のどちらにもずれが生じます。

商品コード、規格、箱の入り数、重量等を対応させます。途中で商品の包装や規格が変わった場合、旧品と新品を分けて確認します。似た名前の商品を同じものとして扱わず、現物、仕入明細、商品マスタからたどれるようにします。

加工・製造を行う場合は、材料と完成品、仕掛品を同時に同じ数量へ数えていないかも確認します。材料を使って完成品になった動きと、外部から仕入れた動きを分け、単純な小売の数量表をそのまま当てはめないことが必要です。

複数店舗・外部倉庫の棚卸を一つにまとめる手順

最初に、保管場所と管理者を一覧にします。店舗内のバックヤード、倉庫、外部の発送代行、取引先での預かり等を含め、どこまでを今回の棚卸へ含めるかを明らかにします。自社にない物を漏らさず、他者の物を混ぜないことが大切です。

次に、場所ごとの数えた日時と、その間の店舗間移動・出荷・入荷を確認します。店舗Aで数えた後に店舗Bへ移した物を、Bでも数えれば重複します。反対に、どちらの棚卸時点にも含まれなければ漏れます。移動日と棚卸の締め方を対応させます。

最後に、場所別の原始記録と集計表を残します。外部倉庫のデータを使う場合は、実在庫、販売可能数、出荷待ち、返品処理中等のどの数値かを確認してください。画面上の「在庫」という項目が、自社の期末棚卸数量と必ず同じとは限りません。

返品・見本・自家使用など、販売以外の動きを整理する

商品が減る理由は販売だけではありません。仕入先への返品、見本の提供、事業主の家事消費、廃棄、破損等の事情がある場合は、その数量、時期、相手、事実の記録を分けます。すべてを「ロス」とまとめて金額だけ調整しないようにします。

個人の家事消費等は、単に在庫を減らすだけではなく、収入金額等の確認が必要になる場合があります。法人から役員等へ渡した場合も、同じ処理を無条件には使えません。誰へ、何の目的で渡したかを確認し、税務上の扱いを検討します。

返品では、現物の返送、仕入先の受領、値引き・返金の明細と帳簿を照合します。期末直前に返送し、返金処理が翌期というように日付がずれる場合は、物の帰属と計上の両方を確認します。振込の日だけで在庫の有無を決めないことが必要です。

期末在庫の訂正が翌期に与える影響を図表にする

単純な商品売買で、期末在庫が50万円少なかったとすると、当期の売上原価を50万円多く計算していた可能性があります。同じ誤った金額を翌期首へ引き継いでいた場合は、翌期の原価計算も確認します。ただし、二年分が必ず相殺されて税金が同じになるという意味ではありません。

期間 確認する項目 訂正時の注意
指摘された期 期末数量・評価、原価 他の売上・仕入のずれも確認
翌期首 引継いだ数量・評価 古い残高が残らないよう整理
翌期以降 販売、処分、期末在庫 同じ原価を二度調整しない
消費税等 各取引と計算方式 所得計算の訂正額をそのまま転用しない

過去の表と申告を直す際は、当期、翌期首、その後の動きへ戻れる対応表を残します。会計ソフトの過去残高を上書きするだけでは、提出済み申告や旧版との関係が分からなくなるため、訂正の根拠と対象を区別します。

調査で在庫を確認する際の、現場と経理の役割

現場担当者には、実際の保管場所、商品の区分、数え方、移動や処分の事実を確認していただきます。経理担当者は、仕入・販売・評価と帳簿への集計を確認します。同じ人が全てを担当していなくても、資料番号や商品コードで両者をつなげることができます。

現場では二十個あると説明し、集計では十箱というように、単位が違ったまま回答しないようにします。担当外の計算を推測して答えるより、誰のどの記録で確認するかを明らかにします。当事務所が、現場の事実を会計・税務の検討と結び付け、税務署への説明を整理します。

指摘が解消しても、翌年に同じ表をコピーするだけでは再発するおそれがあります。商品マスタ、単位、棚卸日時、移動の締め方、差異を調べる担当と承認を記録し、次の決算へ引き継ぐところまで分担をご案内します。

数量・単価・所有関係を別々に確かめる

確認軸 見る資料 見落としやすいこと
数量 実地棚卸の用紙、入出庫、商品マスタ 数え漏れ、重複、箱と個の単位違い
保管場所 倉庫・店舗・委託先の一覧 他所の自社在庫、自社にある預り品
所有・帰属 契約、仕入・販売、納品 置き場所と所有者が一致しない取引
単価・評価 評価方法の届出、仕入、計算表 売価・仕入価、税込・税抜の混在
期末の前後 納品・引渡し、返品、売上・仕入計上 数えた日時と決算日のずれ
廃棄・劣化 処分の記録、写真、承認、処分費等 評価減と実際の廃棄の混同

まず数量の表を完成させ、次に単価の根拠を確認するなど、作業を分けると差額の原因を探しやすくなります。金額の合計だけ合わせるために、数量や単価を動かさないでください。

今数えた在庫と、過去の期末在庫は違う

調査日に在庫を数えても、その数量が過去の決算日時点の数量と同じとは限りません。決算日から現在までの入荷・販売・返品・廃棄・移動を確認する必要があります。数えた日と時刻、営業や出荷を止めたかも記録します。

実地棚卸を決算日の数日前後に行った場合は、その間の動きをどう調整したかを残します。店頭と倉庫を別の日に数えたなら、店舗間移動が両方へ入っていないか、どちらからも漏れていないかを点検します。

元の数取表がなく、後から一覧を再構成する場合は、当時作成した記録と、調査準備で作った説明表を区別します。数年後の記憶だけで期末数量を確定せず、仕入・販売・委託先の資料等から確認できる範囲を整理します。

外部倉庫・委託販売・預り品を確認する

ネット販売の発送を外部へ委託している場合や、複数の店舗へ商品を置いている場合は、自社に現物がなくても確認が必要です。倉庫の残高、入出庫、販売・返品記録と、自社帳簿の対象を照合します。

反対に、自社倉庫に取引先から預かった物があれば、自社の在庫と分けます。委託販売や輸送途中の物については、契約と実際の引渡し等を確認し、保管場所だけで帰属を決めません。

複数のECサイトで同じ在庫を販売している場合、サイトごとの表示数を全て足せば正しいとは限りません。共通在庫か専用在庫か、実数・販売可能数・引当数の違いを確認します。ネットショップの税務調査もご参考ください。

単価や評価方法を、利益に合わせて変えない

期末の評価は、採用・適用している評価方法と取引実態に沿って確認します。前期の計算表、届出の控え、仕入明細等を用意し、今年だけ別の方法へ変わっていないかを確かめます。方法の選定・変更には手続きや条件が関係するため、利益を減らす目的で自由に使い分けるものではありません。

同じ商品でも、仕入時期、送料等、セット・ばら売り、単位の変更により確認事項が変わります。売価を仕入単価と取り違えたり、税込と税抜を混ぜたりしないようにします。

仕入先の請求総額と棚卸の単価が合わないときは、値引き・返品、付随費用、原価差額などの内訳を確かめます。「前年と同じ金額だから正しい」とするのではなく、数量と計算根拠へ戻れることが大切です。

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売れ残り・破損・廃棄を同じ処理にしない

個人事業の一般的な商品で、評価方法を届け出ていない場合

個人事業の一般的な商品の評価では、評価方法を届け出ていない場合、最終仕入原価法で確認します。年末に最も近い時期の仕入単価と、年末の数量を用いる方法です。仮に対象商品のその単価が1個800円、年末数量が20個なら、この単純な前提で評価額は16,000円です。販売価格や、その年に払った仕入代金全額を使うものではありません。

ただし、単位や商品の区分、取得価額、消費税の経理方式等をそろえて確認します。既に別の評価方法を採用している場合や、法人、農業等に、この例を無条件に当てはめません。税務署の指摘が「評価方法が違う」という内容なら、届出と過去の計算から確認します。

売れない期間が長いだけで、全ての在庫を任意にゼロとできるわけではありません。評価損や低価法の扱いは、個人・法人、採用する方法、資産の状態等で確認が異なります。会計上の評価と税務上の損金・必要経費の判断も一致するとは限りません。

災害による損傷、著しい陳腐化等がある場合は、状態、数量、販売・使用の可能性、価格の根拠等を整理します。個人事業の取扱いを、法人へそのまま当てはめないようにしてください。

実際に廃棄した場合は、何を、いつ、どれだけ、どの方法で処分したかが確認事項です。廃棄一覧、写真、社内の承認、処分業者の資料等を対応させます。これらは事実を確認する材料で、特定の書類が一枚あれば必ず損金になるという意味ではありません。

仮例:棚卸表の20個を廃棄したつもりだった

一覧から20個を除いていても、現物が残っている、処分が翌期だった、別倉庫へ移しただけという場合は、確認すべき内容が違います。廃棄予定、評価減、実際の廃棄を分け、日付と事実を確認します。

調査に合わせて処分日をさかのぼらせたり、写真を当時のもののように扱ったりしないでください。後から整理した資料には、その作成時期と確認根拠を残します。

在庫と売上・仕入の期ズレを一緒に確認する

決算日前後の仕入や販売は、在庫だけ直すと、売上・仕入の計上と合わなくなる場合があります。いつ引き渡したか、帳簿へいつ計上したか、棚卸表へ含めたかを同じ取引ごとに確認します。

例えば、期末直前の納品について、仕入を翌期に入れた一方で当期在庫に含めた場合と、当期仕入に入れて在庫から漏らした場合では、誤りの形が異なります。単に期末在庫だけ増減させて終えないことが必要です。

売上の期ズレと前後の年の対応もご参考ください。期末在庫を直したら、翌期の期首やその後の販売・原価へどう影響するかも確認します。同じ金額を両期で重ねて調整しないようにします。

税務署から差額を示されたら、要因を分ける

「在庫が少ない」と言われたら、どの商品、数量、単価、期間、評価方法に違いがあるかを確認します。全部をまとめて否定したり、利益へ影響する額だけを見て受け入れたりせず、原資料と対応させます。

差額の区分 確認するもの
数量の差 数取表、入出庫、移動・返品
単価の差 仕入資料、評価方法、計算条件
範囲の差 預り・委託、外部倉庫、輸送中
時期の差 決算日前後の引渡しと計上
処分の差 廃棄の事実・時期、評価減の根拠

確認できない部分は、その理由と追加で調べる資料を分けて伝えます。当事務所が前提と計算を整理し、税務上の検討と税務署への説明を進めます。

棚卸の調査について、よくあるご質問

棚卸表があれば、それ以外の資料は不要ですか?

集計の元になった数量・単価、保管範囲や期末前後の取引も確認できるようにします。完成した表だけでは、どこで差が生じたか追えないことがあります。

農業や建設業も同じ在庫表で十分ですか?

同じとは限りません。農産物・資材の確認は農業の税務調査、工事別の原価・未成工事は建設業の税務調査もご参考ください。事業の取引と適用する制度に合わせます。

過去の棚卸資料がないまま相談できますか?

現在ある帳簿、仕入・販売記録、倉庫データの状態をお知らせください。復元できる範囲と不足を整理し、必要な資料・作業を分けてご案内します。

数量のつながりを点検する、商品別の整理例

商品管理では、期首数量と入荷数量、販売・廃棄・自家使用等の出庫、期末数量のつながりを確認します。これは実際の動きに漏れがないかを見るための数量管理で、そのまま税務上の評価額や所得を算出する式ではありません。返品、店舗間移動、加工・製造などがある場合は、それぞれの動きを別に整理します。

例えば、期首10個、入荷50個、販売45個、確認済みの廃棄2個なら、単純な前提で残る数量は13個です。実地棚卸が11個なら、差の2個について未記録の販売、別の保管場所、数え方や入出庫の誤り等を調べます。差額を直ちに盗難や廃棄と決める例ではありません。

商品別に残す項目 点検する内容
商品コード・単位 箱、個、重量などを混ぜていないか
保管場所 店舗、倉庫、外部委託先を含むか
数量の期間 期首・期末、入出庫の締め方が同じか
例外の出庫 返品、見本、自家使用、廃棄等を分けたか
単価の参照 評価方法と仕入資料へ戻れるか
差異の説明 確認済みと未確認、訂正の根拠を残したか

商品名が途中で変わった、旧コードを別の商品へ使った場合は、対応表も必要です。二つのデータが一致しない理由を、すぐ売上漏れや棚卸漏れと決めず、集計単位と対象範囲から点検します。

後から過去の棚卸を作り直すときの注意

当時の棚卸がなければ、仕入・販売、委託先の残高、期末前後の納品等の資料を整理します。現時点の残高から過去へ戻す場合、途中の廃棄・返品や管理方法の変更も関係します。記録がない動きを推測で確定させず、復元できた範囲と不足を残してください。

資料が一部だけある場合は、例えば「商品Aの倉庫分は確認済み、店頭分は未確認」と具体的に分けます。集計表の全ての欄が埋まっていることより、根拠と対象が明確であることが大切です。後から作成した表を、当時作った棚卸表のように日付を変えて提出しないようにします。

翌期への影響を残して、同じ誤りを繰り返さない

期末在庫の訂正は、翌期首やその後の原価へつながります。税務署から指摘された年だけ数字を変更し、翌期の会計ソフトや集計表に古い数量・価額が残っていると、二重の調整や別のずれが生じるおそれがあります。対象商品と期間、訂正後のつながりを一覧にします。

今後の棚卸では、数える担当、確認する担当、入出庫を締める時刻、外部倉庫のデータ取得、差異の承認と記録の保管先を決めます。当事務所が、数字を確認できる資料の形と経理への受け渡しを整理し、毎期同じ箇所で確認が止まらない運用をご案内します。

棚卸資料の確認から、継続経理まで当事務所へ

初回相談は無料です。税務署の任意調査対応の着手金の掲載額は法人30万円・個人20万円です。過年度申告作成や成功報酬等を含むご依頼範囲は、税務調査サービスの料金に基づいて個別に整理し、消費税込みの支払総額をご説明します。

ご本人・担当者には商品の所在、実際の動き、処分等の事実を確認していただき、当事務所が資料の対応と税務の検討、調査への説明を進めます。調査後は、毎回数え方を作り直さずに済むよう、期末の手順、資料の残し方、税務顧問・経理支援での分担もご案内します。

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