税務調査

税務調査で減価償却・固定資産を指摘されたら?取得・使用開始・修繕の確認資料

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

税務調査で減価償却費を確認された場合は、何を取得したか、取得価額、事業で使い始めた時期、償却方法・耐用年数、使用・処分の状況を資料でつなげます。支払った日や請求書の品名だけで、全ての税務処理が決まるものではありません。

機械・車両・店舗設備・パソコン等の処理には、個人・法人や適用する制度の違いもあります。秋田税理士事務所には元国税調査官の税理士が在籍し、台帳と現物・契約・帳簿の確認から、税務署とのやり取りまで支援します。

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固定資産台帳の数字と、実際の設備を照合する

固定資産台帳は、取得した資産の内容と取得価額、取得・使用開始、償却、帳簿価額、処分等を管理する資料です。台帳の合計が決算書と一致していても、個々の資産の内容や計上時期まで正しいとは限りません。

機械が台帳にあるのに現物が見当たらない場合は、売却、廃棄、他の拠点への移動、貸付等を確認します。反対に現場にある設備が台帳にない場合は、賃借・リース、他者の所有、費用処理、計上漏れ等の事情を調べます。現物の有無だけで不正と決めるのではありません。

台帳の項目 照合する資料 確認する理由
資産の名称・単位 見積、仕様、写真、設置場所 一式の中身、複数資産との区分
取得価額 契約、請求、付随費用 本体以外の費用等の扱い
使用開始 納品、設置、試運転、稼働記録 購入・支払日との違い
償却の計算 方法、耐用年数、明細・届出等 適用条件と申告への反映
使用状況 業務の内容、共用の記録 事業での利用範囲
処分 売却、廃棄、除却の資料 時期、売却代金、残存簿価

調査で固定資産を確認する順番

固定資産の指摘を受けたら、最初に対象の資産番号、年分・事業年度、指摘の理由を特定します。次に、取得の内容・使用開始・利用・償却・申告・処分の順に資料を並べます。指摘された当期の償却額だけを変更すると、翌期以降の残高や申告調整との関係が崩れる場合があります。

順番 確認する事実 資料の例
1 取得の中身 何を、誰から、どの単位で取得したか 見積、契約、請求の内訳
2 価額と支払 本体・付随費用、値引き等 請求、支払、精算の記録
3 使用開始 いつ、何の業務で使い始めたか 納品、設置、稼働の記録
4 計算の前提 区分、方法、年数、事業利用 台帳、届出、利用の記録
5 申告との関係 償却額、申告調整、特例 決算書、申告明細、過去の調整
6 その後の動き 移設、改良、売却、廃棄 工事・処分等の資料

台帳に「機械一式」としかないときは、仕様や設置場所を確認して現物と対応させます。調査日現在の状態だけで、購入時の構成や当時の利用を決めず、途中の交換・増設等も整理します。

仮例:請求書の100万円と台帳の金額が違う

機械本体、運搬・設置、保守等を一枚の請求書で支払っている場合、請求総額と一つの固定資産の価額が必ず同じとは限りません。各項目の性質と、取得に付随する費用等の扱いを確認します。反対に、運搬・設置等を全て支払時の費用へ分けてよいとも限りません。

このときは、請求の項目、実際の内容、台帳や費用へ入れた金額、税務上の検討結果を同じ表へ並べます。請求書の合計と支払額、資産・費用等へ振り分けた合計がつながるかを確認します。これは照合方法であり、特定の内訳が必ずどの科目になるという仕訳例ではありません。

前払い、分割払い、リース等がある場合は、支払時期と取引の性質を分けます。口座から出た金額だけを基準に費用や資産を決めると、未払・前払や取得額との関係を説明できなくなることがあります。

使用開始の根拠が複数の日付に分かれている場合

契約、納品、設置、試運転、業務での使用という日付が異なる場合、どの日付が何を示すかを整理します。使用開始日は、その資産の属性と実際の利用状況等から確認するため、最も早い日や支払日を自由に選ぶものではありません。

例えば、店舗へ設備を搬入したものの、内装工事が終わらず使えなかった場合と、既に営業で使用していた場合は、事実が異なります。賃貸用の物件では、物理的な利用者がまだいない場合も含めて取扱いを確認する必要があり、「実際に人が使った日だけ」という一律の説明はできません。

日付を説明する資料には、納品・据付、業務日報、稼働、営業・募集、担当者間の連絡等があります。これらを後から集めた場合は、資料の作成日と、その資料が示す当時の事実を区別してください。税務署から別の日付を指摘されたら、その根拠と自社資料の違いを確認します。

少額資産をまとめて購入した場合の注意

パソコン、モニター、周辺機器や店舗設備等をまとめて購入すると、請求書一枚の総額だけでは判定できないことがあります。通常の取引単位、資産の機能や構成等を確認し、請求を分ければ一律に別資産になる、合計額だけ見ればよい、という判断はしません。

適用を検討する制度ごとに、金額、取得・供用時期、事業者・資産の要件、申告上の明細等を確認します。以前の「30万円未満」という設定を使って新しい取得を処理する場合も、改正の対象時期と適用条件を照合します。新しい金額基準だけを過去へさかのぼって適用しないようにします。

同じ資産について、通常の償却、一括償却、少額資産の特例等を重ねて費用へ入れないことも必要です。台帳と申告明細の管理が別の場合は、資産番号で対応させ、どの制度で計算したかを残します。

修繕の工事に、交換と機能追加が混在している場合

一つの工事に、故障部分の回復、消耗部品の交換、新たな設備や機能の追加が含まれる場合があります。請求書に「修理一式」とあるだけで全体を費用とせず、支出の内容を分けて確かめます。費用と資本的支出の区分では、実質と適用する基準・条件を確認します。

現場担当者は、何が壊れ、以前はどの状態で、工事後にどう変わったかを説明できるようにします。経理担当者は、見積・請求の内訳、既存資産の台帳、処理した科目と申告を照合します。図面や仕様がない場合も、残る資料と確認できる事実から整理します。

増設や改良があると、元の資産と新たな支出の関係、償却の計算、取り外した部分の扱いなど、複数の確認が残る場合があります。税務署から費用処理を指摘された際も、当期の経費を取り消すだけで終えず、その後の処理までつなげて確認します。

資産を売ったのに、台帳と入金が結び付かないとき

車両等の買替えでは、下取り、ローン残高の精算、新規購入、諸費用が一つの精算書へ入る場合があります。銀行へ入った金額や支払った差額だけを売却価額・取得価額と決めず、精算の内訳を確認します。

売却した資産番号、売却日、相手、代金、帳簿価額、売却に伴う支払等を整理します。代金がまだ未回収、または他の支払と相殺された場合も、入金がないというだけで売却取引を確認しなくてよいわけではありません。

廃棄のつもりだったが実際には売却・譲渡していた場合なども、事実の確認から始めます。帳簿へ残る資産を一括で除くのではなく、一件ずつ経緯と資料を対応させます。ご本人が分かる処分の事情を共有していただき、当事務所が会計・税務の処理と説明を整理します。

次の年度に、訂正後の台帳を引き継ぐ

過年度の償却額や価額を訂正したら、どの期の申告へ影響し、翌期首の残高や申告調整をどう引き継ぐかを確認します。会社の台帳、会計ソフト、税理士の申告用データが別々にある場合、どれか一つだけ直して終えないことが大切です。

将来売却するときにも、修正後の帳簿価額や経緯が必要になります。今回の指摘と訂正根拠を資産番号へひも付けて残し、担当者が変わってもたどれる状態にします。調査の対応と、次の決算で同じ計算を繰り返さない管理を一緒に整えます。

購入日と「事業の用に供した日」は同じとは限らない

一般に、事業の用に供した日は、その資産の本来の目的に沿って使い始めた日を確認します。機械を買って倉庫へ置いただけの場合と、設置・試運転を終えて生産を始めた場合は、状況が異なります。

決算直前に取得した設備は、契約、搬入、据付、稼働がいつ行われたかを順に整理します。請求書が決算日前だから当期に一年分の償却ができる、支払が翌期だから当期には関係しない、と決済だけで判断しないことが必要です。

仮例:3月に機械を購入し、4月に生産開始

3月決算法人が3月に購入・搬入し、据付や試運転を経て4月から生産を開始したとします。3月の請求・振込だけで、3月末までに事業の用に供したと決めることはできません。設備の属性と実際の使用開始を資料で確認します。

これは日付の確認方法を示す仮例です。全ての機械が同じ結論になるという意味ではありません。既存設備への追加、試験使用、設置条件等があるなら、その具体的な事情を当事務所へお知らせください。

取得価額は、請求書の合計だけで決めない

請求書に本体、運搬、設置、工事、保守等がまとまっている場合は、内容を分けて確認します。取得に付随する費用の扱い、別の資産や当期費用との区分が関係する場合があります。全額を一つの資産へ入れるのでも、全ての付随費用をその場の経費にするのでもありません。

「店舗工事一式」のように内訳が見えない場合は、見積明細、工事内容、図面、納品等を確認します。会社が発注したものと、貸主が所有するもの、借りている設備が混在していないかも整理します。

補助金や保険金、値引き、下取り等がある場合は、契約額・支払額・入金を分けます。補助金が入ったから設備の価額から自由に引いてよいというものではなく、適用する税務処理と要件を別に確認します。

個人・法人、制度・取得時期を分けて計算を確認する

減価償却の方法や税務上の計算には、資産の種類、取得時期、個人・法人、届出や選択等が関係します。会計ソフトへ資産を登録しただけで、全ての前提が正しいとは判断しないでください。

少額の資産や一括償却、特別な措置等を適用している場合は、取得価額の判定単位、事業者の要件、取得・使用した期間、申告明細等を確認します。改正前後の制度を混ぜず、過去の資産にはその対象時期の取扱いを確認します。

中古資産も、購入価格が安いというだけで任意の短い年数を使えるわけではありません。資産の種類・経過年数、適用した方法と条件の根拠を残します。本記事のチェック表は計算前提の整理用で、全ての資産の耐用年数や特例の適用可否を決めるものではありません。

修繕費か資本的支出かを指摘された場合

少額資産の特例は、取得時期と適用条件を残す

個人の青色申告者に関する少額減価償却資産の特例では、2026年4月1日から2029年3月31日までの取得分は、一定の要件の下で10万円以上40万円未満が金額の対象になります。2026年3月31日までの取得分の「30万円未満」と区別します。対象期間や事業者・資産等の要件、年の合計額300万円までという限度等もあり、40万円未満なら誰でも全額経費という制度ではありません。

税務調査では、取得・使用時期、価額の判定単位、税込・税抜経理の前提、適用した明細を確認します。法人の適用条件も別に確認し、前年の特例やソフトの設定をそのまま新しい取得へ使わないようにします。一括償却等、他の方法と重ねて同じ費用を計上しないことも必要です。

設備や建物への支出では、維持管理・原状回復なのか、価値や使用可能期間へ影響する内容なのか等を確認します。「修理」と書いた請求書なら全額費用、「改装」なら全額資産というように、名称だけでは決まりません。

支出前後の状態、工事の目的、交換した部分、追加した機能、既存設備との関係を整理します。内容に加え、税務上の区分基準や取扱いが関係するため、合計金額だけで結論を決めないことが大切です。

資料 分かること 不足しがちな点
見積・工事明細 作業や交換部材 「一式」だけでは内容が不明
支出前後の写真 壊れた状態・変更 撮影時期と対象箇所
仕様・図面 面積、能力、構造等 旧設備との比較
社内の記録 目的と必要性 税務区分を決めるための事実
過去の台帳 既存資産と償却 取り替えた部分の扱い

説明が途中で変わる場合は、当初分かっていたことと、新たに確認できたことを分けます。税務署の指摘に合わせるために、当時と違う工事目的や日付へ書き換えないでください。

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自家用車・自宅設備など、私用との共用を説明する

個人事業主の車やパソコン等では、仕事と私用の両方に使っている場合があります。事業で使う事実と範囲を、走行・使用記録、業務内容、保管や利用の状況等から説明します。全ての支出へ同じ割合を一律に使うものではありません。

法人の資産を役員が私用で使う場合は、会社の費用だけでなく、経済的利益等の確認が必要になる場合があります。名義が会社だから全額問題ないと決めず、利用目的・頻度、会社との精算などの実態を整理します。

契約や請求、支払は会社名義でも、実際の用途を本人しか知らない場合があります。当事務所が税務上の検討を進められるよう、どの業務に必要か、どのように使ったかをお知らせください。

売却・廃棄済みの資産が残っていたら

台帳に残っているという理由だけで償却を続けず、いつ、誰へ、どのように処分したかを確認します。売却なら代金と相手、廃棄なら処分した事実と時期、取り外した設備の所在等を整理します。

帳簿価額がゼロに近くても、売却代金や消費税等の確認が不要になるとは限りません。また、古い機械を使わなくなっただけの状態と、実際の廃棄・税務上の除却を同じものとして処理しないようにします。

紛失や盗難、災害等がある場合は、その経緯と残る資料を確認します。後から作成した一覧には作成経緯を残し、当時の証拠資料と区別してください。

指摘は、資産ごと・期間ごとに整理する

指摘の内容 確認する点
使用開始が違う 稼働等の事実、月数、対象期
価額が違う 本体と付随費用、値引き・補助等
年数・方法が違う 資産区分、取得時期、届出・計算
修繕費ではない 工事内容、区分基準、既存資産との関係
私用が含まれる 使用実態、区分の根拠、役員との関係
処分が未反映 売却・廃棄の時期と金額、申告処理

当期の償却額だけでなく、翌期以降の帳簿価額、償却計算、売却・除却へどうつながるかも確認します。過年度を直しても翌期の台帳が旧数値のままなら、同じ誤りが続くおそれがあります。

物品・端末の確認方法は、税務調査の現物確認、年をまたぐ処理は期ズレと翌期の対応もご参考ください。数字の訂正と元データの保存を分けて進めます。

固定資産の調査について、よくあるご質問

会計ソフトが計算していれば問題ありませんか?

取得価額、使用開始日、方法、年数等の登録が正しいかを確認します。自動計算が正しく動いていても、入力した条件が取引と違えば、申告額が正しいとは限りません。

支払った年に全額経費にできますか?

資産の内容と適用する制度・条件によります。固定資産に当たる場合や、特例の要件を満たしていない場合などもあるため、支払日と金額だけでは決めません。請求と実際の使い方から当事務所が確認します。

古い資産の請求書が残っていません。

台帳、支払、契約、設置・利用等の資料を整理します。ある記録と不足をお知らせください。根拠のない数字で台帳を埋めず、どこまで確認できるかを明らかにします。

資産ごとの照合表で、取得から処分までを一度につなぐ

調査の対象が複数の設備や年度にまたがる場合は、資産番号を基準に、台帳と証憑・現物の対応表を作ります。請求書の品名と台帳名が違っても、型番、設置場所、取得日、数量等から同じ資産をたどれるようにします。

資産番号にひも付ける情報 確認する資料の例
発注・取得 契約、見積、請求、値引きの記録
搬入・使用開始 納品、据付、稼働・利用の記録
償却・申告 固定資産台帳、明細、届出・適用条件
移設・用途変更 拠点の移動、利用部署、共用の変更
修理・改良 工事内容、支出前後、既存資産との対応
売却・廃棄 処分の時期、相手、代金・処分資料

支払が数回に分かれる場合や、一回の請求に複数の設備が含まれる場合は、支払単位と資産単位を区別します。「振込が三回だから三資産」「請求書が一枚だから一資産」とは機械的に判断できません。資産の構成や利用の関係を確認します。

台帳と申告明細が違う場合は、過去の処理を確認する

会計上の減価償却額と税務上認められる額が異なる場合には、その差を申告で調整していることがあります。台帳の当期償却額だけを申告書と比較し、違うから直ちに誤りと判断しないようにします。過去の申告明細や調整の経緯も確認します。

会社の台帳と以前の税理士が管理した表、会計ソフトの資産一覧が別々にある場合は、どれを基準に申告したかを特定します。途中で移行した際の期首残高、方法・年数、取得時期などが正しく引き継がれているかも点検します。

差額を見つけたら、いつ、何の理由で生じ、どの年へ繰り越されているかを残します。履歴を消して帳簿を合わせるより、当初の計算と訂正内容を別にした方が、税務署への説明と翌期の処理を整理できます。

リース・借りている設備は、購入した資産と区別する

毎月同額を払っている機械や車でも、自社で購入したもの、リース、賃借等では契約の性質が異なります。支払科目の名前だけで資産の所有・税務処理を決めず、契約期間、対象物、購入選択、解約等の条件と実態を確認します。

自社の台帳へ載せていないから調査で説明不要というわけではありません。毎月の費用や契約の処理を確認するため、契約書、支払予定、請求、実際の利用の資料を用意します。この記事では各契約の全ての処理を一律に示さず、ご本人の契約と計上方法を照合する作業を中心にしています。

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