税務調査

税務調査で個人口座・家族の通帳はどこまで見られる?入金の説明と準備資料

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

税務調査では、事業の売上や支払に使っている個人口座、申告内容と関係する家族名義の口座等が確認されることがあります。個人名義なら対象外、家族なら全ての取引が当然に対象、という一律の説明はできません。何の税目・期間・取引を確かめる必要があるのかを整理して対応します。

また、口座への入金が全て売上というわけではありません。自分の別口座からの振替、借入、立替精算、資産売却等を分け、元の取引と資金の流れを説明することが大切です。秋田税理士事務所では、元国税調査官の税理士を含む体制で、資料確認と税務署への対応を支援します。

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口座の名義と、お金の性質を分けて考える

個人事業主は、個人名義の通帳を事業にも使うことがあります。法人でも、会社の売上を一時的に社長の個人口座で受け取ったり、社長が会社の支払を立て替えたりする場合があります。そのときは、名義だけで申告との関係を判断できません。

税務上の確認では、誰の取引か、何の対価か、いつ発生・入出金したか、帳簿と申告へどう反映したかが関係します。通帳があるだけで説明が終わるのではなく、契約・請求・入出金・帳簿をつなげます。

一方、通常の税務調査で何でも無制限に確認できるという意味でもありません。例えば法人の調査で社長の個人口座の提示を求められた場合は、事業との関連や、確認する取引・期間を整理します。ご本人だけで判断しにくい要求は、具体的な内容を当事務所へお知らせください。

複数口座の照合は「取引」と「資金移動」の二段階で行う

最初に、対象となる口座の一覧を作ります。口座の名義人、実際の管理者、事業で使った期間、売上の受取や支払に使った用途、手元にある明細の期間を分けます。名義と管理者が違う場合も、実際の状況をそのまま整理してください。

次に、契約や請求から発生した取引と、実際の口座間の動きを対応させます。取引が一件でも、代金を複数回で受け取ったり、決済サービスを経由したりすれば、口座上の行は複数になります。一つの入金が複数の請求に対応する場合もあります。

この二段階を分けず、通帳の行数だけで取引を数えると、分割入金・まとめ入金・自己口座振替を取り違えるおそれがあります。入金合計と売上合計の差を見つけたら、どの差が未入金、手数料、口座振替、別の収入等なのかを整理します。

仮例:請求11万円、決済会社から10万6,700円が入金

顧客へ11万円を請求し、決済手数料3,300円が差し引かれ、10万6,700円が入ったという仮例を考えます。まず、請求と仕事の内容、売上として計上する時期を確認します。その後、決済会社の明細で総額・手数料・振込額を照合します。この金額は説明用で、実際の手数料率や税区分を示すものではありません。

資料の段階 金額の仮例 照合すること
顧客への請求 110,000円 誰の、どの仕事の対価か
決済の精算 110,000円−3,300円 手数料・返金等の内訳
口座への入金 106,700円 精算対象と入金日
別の自己口座へ移動 106,700円 新しい売上ではなく移動かを確認

最後の資金移動まで新たな売上へ追加すれば、重複の原因になります。反対に、最初の入金額だけを売上にすると、売上総額・費用の内訳が抜ける場合があります。消費税の扱いや計上時期は、明細を照合した後、取引の条件に応じて別に確認します。

現金で引き出した後の使途を聞かれた場合

銀行から現金を引き出した記録は、その時点の資金移動を示すものです。そこから仕入先へ払ったのか、手元へ残したのか、生活費に使ったのかは、別の資料や説明が必要になります。出金額の全てを事業費にしないことと、全てを私用と決めないことの両方が大切です。

仕入や経費で使ったなら、相手方、購入内容、支払日、金額を確認します。家計の支出なら、事業帳簿へ経費として計上していないか、事業資金から生活へ回した金額をどう記録したかを照合します。後から整理する表では、元の出金と実際の支払を二回費用へ入れないようにします。

ATMでまとめて引き出し、複数の支払に使っている場合は、その配分と残りの手元現金を確認します。現金出納帳や領収書が不足している場合、どこまで資料で確かめられ、どこからが未確認かを分けます。残高を合わせるために、実際にはない支払を作らないでください。

一つの入金に売上と立替精算が混じっている場合

取引先からの入金に、業務の対価と、取引先のために立て替えた支出の精算が含まれることがあります。請求の名称だけを見て、全額売上や全額立替金と決めることはできません。誰が負担する支出か、契約と請求、元の購入・支払、相手からの精算を対応させます。

例えば、請求書に報酬と交通費が別記されていても、それだけでその交通費が税務上当然に売上と無関係になるわけではありません。取引の性質と合意内容に応じて確認します。源泉徴収や消費税なども、単に請求書の行が分かれているという理由だけで結論を出さないようにします。

複数の仕事をまとめて入金された場合は、請求番号ごとの対応表を作ります。未回収が残る請求、値引きした部分、相殺した支払等があるなら、その根拠も残します。入金総額だけ一致させても、取引ごとの年分や税区分が違う可能性はあります。

家族や社長の説明と、通帳の数字が一致しないとき

まず、比較している期間と金額の範囲が同じかを確かめます。本人は一年間の生活費を話し、資料は一つの口座の半年分というように、前提が違うことがあります。家計全体と事業だけの数字も分けます。

次に、現金の保管、別口座、家族による直接の支払など、入出金表へ含めていない動きがあるかを確認します。説明に合う資料を探すことと、資料へ合う話を作ることは別です。当時の事実を確認し、記憶の違いや集計の不足が分かったら、その内容と訂正理由を残します。

食い違い 先に調べること
生活費の説明が入出金より多い 現金払い、家族の直接負担、対象期間
借入と説明したが入金先が違う 交付された資金の経路、契約・返済
売上より入金が少ない 未入金、手数料、相殺、返金
売上より入金が多い 自己振替、前受、借入、他の収入
会社と社長の残高が合わない 立替、精算、貸借、給与等の記録

個人事業から法人へ切り替えた年の口座を整理する

会社設立後も、以前の個人口座へ代金が入る場合があります。入金日が会社設立後というだけで、その全額を会社の新しい売上とするものではありません。どの事業者が、いつ、どの取引を行ったかを、契約・請求・業務の実態から確認します。

個人事業の売掛金が回収されたもの、会社の代金を個人口座で受けたもの、会社へ入れた設立資金や貸付等を区別します。口座を会社へ切り替えた日と、契約・請求の名義を切り替えた日がずれている場合も、その事情を整理します。

個人側の申告と法人側の決算を別々に確認するだけでは、同じ代金を両方へ入れたり、どちらにも入れなかったりすることがあります。当事務所が、取引の帰属、資金移動、帳簿上の相手勘定を整理し、前後の申告につながる説明を進めます。

調査後は、口座ごとの役割と資料共有を決める

事業用と生活用を分けることは確認作業の軽減に役立ちますが、分けただけで全ての税務判断が不要になるわけではありません。売上受取、経費支払、家族・社長との精算をどの口座で行い、どの資料を事務所へ渡すかを決めます。

普段と違う入金があったときは、帳簿へ登録する前に内容を共有できる流れを作ります。借入、資産売却、立替、口座移動などの区分を、ご本人が毎回一人で判断し続ける負担を減らし、元資料へ戻れる形で経理を継続します。

提示を求められたとき、最初に確かめること

確認項目 整理する内容
調査対象 個人・法人、税目、年分・事業年度
口座と期間 金融機関、対象期間、どの資料が必要か
取引との関係 売上受取、会社との資金移動、家計との共用等
残っている資料 通帳、電子明細、請求、契約、帳簿
不足の状態 解約、紛失、取得期間の制限、名義人が管理
提出履歴 既に見せた期間や提出ファイル、未回答の項目

口座番号や認証情報を、用途の確認ができない相手へ送る必要はありません。当事務所へ初回相談するときも、最初から全データを一括送信するのではなく、通知内容と資料の種類をお知らせいただき、受け渡し方法を整理します。

入金を売上・振替・借入等へ分けるための資料

入金の説明 照合する資料 注意する点
顧客の代金 請求、納品・業務記録、入金消込 振込名義と請求先が違う場合も対応を残す
自己口座からの振替 送金元と入金先の明細 両側で売上にしない
借入 契約、振込、返済予定・実績 残高を合わせるための架空借入を作らない
立替の返金 元の購入、立替精算、返金 元の費用と返金の関係を確認
資産の売却 売買契約、取得資料、入金 売上でないとしても別の課税確認が必要な場合がある
家族との資金移動 資金の由来、合意、管理・返済等 名称だけで贈与・借入・売上と決めない

入金の振分表は、銀行の摘要だけで埋めません。例えば摘要が個人名でも、顧客本人ではなく家族や決済代行者からの支払かもしれません。相手と内容が不明な入金は、未確認の欄へ残し、調べる資料を明らかにします。

仮例:自分の2口座を経由して、同じ30万円を移した

事業口座から生活用口座へ30万円を移し、その一部を別の口座へ移したとします。各口座の入金合計だけを足すと、同じお金を何回も収入として数えるおそれがあります。送金日、金額、相手口座を対応させ、資金移動と新しい収入を区別します。

ただし、金額と日付が似ているだけで振替と決めないでください。振込手数料、まとめ入金、送金の時間差、別の売上が混じる場合があります。送金元の出金と入金先を照合し、差額があれば理由を確認します。

この例は重複集計を避ける手順の説明で、30万円の移動に課税がないと一律に示すものではありません。誰から誰への資金か、個人と法人をまたいでいるかでも、確認事項は変わります。

売上が家族名義の口座へ入っていた場合

家族名義の口座へ顧客代金が入っているなら、その名義だけを理由に事業売上から外せません。誰が契約・仕事をし、どの請求に対する入金かを確かめます。家族が通帳を管理している場合は、管理状況と資料の所在も整理します。

一方、家族自身の給与や以前からの貯蓄などと事業資金が混在する場合は、全額を自分の売上とするのでもなく、取引ごとに分けます。複数人の資金が動いている場合、名義・取引主体・資金の由来・使途を同じ表で確認できるようにします。

「家族に渡したお金だから贈与」「返すつもりだから借入」と口頭の名称だけで結論を決めず、当時の合意や実際の流れを確認します。所得税・法人税と、贈与税・相続税の問題を混同しないことも大切です。この記事は事業の税務調査における取引説明を中心にしています。

法人の資金が社長の個人口座にある場合

会社の売上代金を社長の口座で受け取った場合、会社の売上計上と、社長との資金関係の処理を確認します。「社長の口座だから会社には関係しない」「後から会社へ戻したから過去の計上を調べなくてよい」とは限りません。

社長が会社の経費を立て替えた場合も、請求・領収等、実際の支払、会社からの精算を対応させます。会社から社長へ送金したものが、立替の返金、給与、貸付、その他のどれかは、実態と資料で整理します。

勘定科目だけ変えて処理を終えず、役員貸付金・認定賞与を指摘された場合もご参考ください。別の税目や期間への影響を含めて確認します。

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通帳を紛失・解約している、ネット銀行しか使っていない場合

紙の通帳がない場合は、入出金明細、取引履歴、会計ソフトへ取得した記録等の所在を確認します。ダウンロードできる期間や形式は金融機関・サービスによって異なるため、取得の可否を確認する前に「全期間をすぐ出せる」と約束しないようにします。

一部の月だけ残っている場合は、不足期間を明示します。複数の出力ファイルで補う際は、期間の重なりと抜けを確認してください。PDFとCSVが同じ取引を含む場合、合計を二重にしないことも必要です。

名義人が管理していてご本人の手元に資料がない場合も、勝手にアカウントへ入るのではなく、どの記録が必要か、誰が保有しているか、取得の見込みを整理します。当事務所へは、今ある資料と不足の状態をお伝えください。

提出用の説明表と、元の明細を分けて保存する

説明表には、日付、入出金、相手、取引区分、帳簿との対応、根拠資料、未確認事項を記載します。元の明細に上書きするより、明細の行番号やファイル名を残して別表を作ると、後から取引をたどれます。

私用取引を区分したからといって、必要な原資料の行を黙って消してよいという意味ではありません。提出範囲、マスキング等の方法、対象外と考える理由は、求められた内容を踏まえて確認します。顧客や家族の情報がある事情も具体的に伝えます。

提出後は、提出日、ファイル名、期間、抽出条件を残します。後から説明を訂正するときは、どの資料で何が分かったかを明記し、以前の回答・提出版も保存します。

生活費や預金増加について聞かれたとき

申告所得と生活費、預金残高の増減は、一つの数字だけではつながりません。前年までの貯蓄、借入、家族の収入、資産の売買、税金や借入元本の返済などが関係するためです。

生活費が所得より多いから差額を直ちに売上とするのでも、残高が減っているから売上漏れがないとするのでもなく、事業と家計の資金を分けて確認します。資金源の説明に使う数字を、事業所得の計算にも二重に使わないようにします。

所得と現金の違いは、実額経費と生活費の説明もご参考ください。経費率を当てはめるだけで、口座の差額を埋めないことが大切です。

個人口座の税務調査について、よくあるご質問

家族の通帳を出せば、全部私の売上にされますか?

提示したという理由だけで全入金がご本人の売上になるわけではありません。実際の取引、資金の由来、家族自身の収入などを分け、必要な資料で説明します。調査範囲と取引の区分が曖昧な場合は、当事務所が整理を支援します。

プライベートの口座なら、一律に断れますか?

事業との関連がある取引の確認が必要な場合もあります。名義や呼び方だけで一律に断るのではなく、求められた資料、対象期間、申告との関係を確認してください。通常の調査の権限と範囲は、質問検査と現物確認のガイドでも説明しています。

入金の内容が一部不明でも依頼できますか?

分かっているものと不明なものを分けてご相談ください。通帳しかなくても、請求や決済、契約等から追加で確認する資料を整理します。数字を合わせてから相談する必要はありません。

月ごとの入出金表で、説明済みと未確認を分ける

複数年・複数口座がある場合は、全ての入金を一枚の表へ集める前に、口座ごとの対象期間と取得できた月を一覧にします。次に、入出金の行へ資料番号と取引区分を付け、別口座への振替には相手側の行番号を残します。口座の合計を一致させることと、売上の年分や費用を正しく判断することは別の作業です。

例えば、12月の売上代金が1月に入り、その後家族の口座へ移った場合、仕事の帰属・売上の時期と、1月以降の資金移動を分けます。1月の振込を今年の新たな売上として追加したり、移動した後は家族の収入だと決めたりしないようにします。採用する税務上の取扱いと契約・実態から、前後の申告も照合します。

行へ残す情報 例示する整理の仕方
明細の参照 口座A・対象月・行番号
取引区分 売上、振替、借入、立替等の確認結果
根拠資料 請求番号、契約、相手側口座の記録
帳簿との対応 仕訳番号、計上年、二重登録の有無
確認の程度 資料で確認、本人の説明、追加確認中

説明表には、確認できた根拠を記録し、不明な金額を「その他」でまとめて確定させません。当事務所が、税務上の処理を判断できる材料と、さらに必要な資料を分けるために使います。

家族の生活費と、事業の支払が同じ口座にある場合

家族が事業の買物を立て替えている場合は、購入資料、実際の支払、ご本人や会社からの精算を対応させます。家族から振り込まれた金額を全て売上とするのでも、家族へ払った金額を全て給与や外注費とするのでもありません。何のための移動かを確認します。

同じ家族へ、生活費の負担と事業上の精算を一回の送金で行った場合には、その内訳と根拠を整理します。内訳を後から都合よく分けるのではなく、当時の購入・支払や合意を確かめます。事業と家計の関係を説明する際も、家族自身の収入や預金を二重に数えないようにします。

残高の差額を、借入や贈与という名前で埋めない

現金や預金が帳簿と合わないとき、金額を合わせるために「親から借りた」「以前にもらった」と説明を作ることはできません。借入なら資金の交付、合意、返済等の実態を、贈与等ならその事実と適用する税務を別に確認します。

過去の記録が足りない場合には、何が不明かを残してご相談ください。当事務所では、契約・口座の両側・取引先の記録など、実際にたどれる資料から確認を進めます。辻褄の合う話を作るための作業ではなく、取引と資金の由来を説明できる範囲を明らかにする作業です。

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当事務所が資料の対応、会計・税務上の検討、税務署とのやり取りを整理し、ご本人には実際の取引や家計との区分等の確認をお願いします。口座ごとに同じ説明を何度も作り直す負担を減らし、根拠をたどれる形で調査へ対応します。

調査後に事業用と私用の経理も整えたい方には、税務顧問・経理支援もご案内します。まずは通知内容、対象期間、使っている口座と資料の状況をお知らせください。

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