外貨預金は決算確定申告で為替差損益の計上が必要!税理士が解説
為替で利益が出れば、個人は確定申告しないといけませんし、法人は収益認識をしないといけません。漏れが発覚すれば罰金です。
この記事では、外貨預金の取り扱いについて、法人を前提に東京新宿の税理士 坂根が解説します。
<ポイント>
- 個人→外貨預金を円転した場合や外貨預金で何かを購入した場合(例:外貨建MMFを購入)に為替差損益を計上
- 法人→期末に為替差損益を計上
確定申告書や決算書は外貨建てではなく円建てで作成する
外貨建てでなく、円建てで作成しないといけない
会社の取引が米ドルなどの外貨のみで行われているとしても、法人税の確定申告書や、確定申告書に添付する決算書は円建てでなければなりません。
ここは日本だからです。
もちろん、会社の内部資料として使うのであれば米ドルなどの外貨で決算書を作成しても問題ありませんが、税務署や金融機関など、外部に提出する場合は日本円で決算書を作成しなければなりません。
ちなみに、決算書の作成目的は多々あります。申告書の作成のため、融資を受けるため、会社の内部資料(経営判断資料)として使うため等です(詳しくは「決算書の種類や作成目的など、起業・会社設立に強い税理士が解説」をご覧ください)。
貸借対照表の例示
決算書は、会社が持っている財産や稼いだ利益などを示す書類です。
上記はいくつか存在する決算書のうち、会社の財産がいくらあるのかを示す資料「貸借対照表(B/S)」です。
例えば1万ドル(1ドル100円)の預金を保有している場合、上記の「現金及び預金」の欄には「10,000ドル」ではなく、「1,000,000円」(※)と記載されます。
※10,000ドル× 100円 = 1,000,000円
それでは次に、米ドルから日本円への換算を、どのタイミングで行うべきか確認していきましょう。
外貨預金などを円換算するタイミング
米ドル預金といった外貨預金など、外貨を円換算するタイミングは大きく2つあります。
<ポイント>
- 商品の売買など取引を行ったとき
- 決算期末
1.取引を行ったときに円換算を行う
米ドルなどの外貨で取引を行った場合、取引を行った時点で1度円換算を行います。
例えば、1万ドルの商品を販売した際に為替レートが1ドル100円だった場合、商品販売時点で100万円の売上を認識します。
2.決算期末に外貨の円換算を行う
1万ドルの商品を販売した後、米ドルのまま保有していれば為替レートの変動による影響を受けます。
12月決算の会社が6月に1万ドル(1ドルあたり100円)で商品を販売し、米ドルのまま普通預金として持ち続けていたとします。
その後12月(期末)になり、1ドルあたり106円まで円安に振れました。
この場合、日本円に変えるつもりがなくても6万円(※)を会社の利益として計上しなければなりません。
※1万ドル × (106円 – 100円)
<利益になるのは以下3番、106万円>
- 取引時の売上
100万円 (1万ドル) - 為替レートの変動による利益
6万円(ー) - 合計
106万円(1万ドル)
上記の例で言えば、仮に1万ドルの商品を売ったとしても、1万ドルの20%(2,000ドル)ではなく、円建ての利益106万円に対して税金がかかります。なお、法人税は会社の利益に対し、だいたい20%~30%程度かかる税金です。
つまり、法人税の計算においては、ドルでしか取引を行っていない場合であっても為替変動の影響を受けてしまう点に注意が必要です。
なお、例え外貨であっても、長期的に保有するものなどは上記2の期末時における為替レートの変動を考慮しないものもあります。
3.決算期末の為替変動を考慮するかしないかは、ある程度選択できる
上記2の、期末時における為替レートの変動を考慮するかしないかについては、税務署に書類を提出することによってある程度コントロールすることができます。
短期保有の外貨預金など、中にはコントロールできないものもありますが、ご自身の会社でどうすべきかはケースバイケースですので、顧問税理士の方にご相談ください。